本研究は、部品の様々な表現に着目した建物情報モデルの拡張を試みるものである。三次元モデルの作成工程において、部品の詳細が入力され精緻化されているさまや設計変更されるさまなどがここで言う表現に含まれる。A)部品の性質に関する考察、B)知識ベース化、C)データベースの実装、D)他ソフトウェアとの連携、これら四つをサブテーマに研究を実施する。 今年度は伝統木造構法による四脚門と三重塔を対象にした三次元モデル化においてB)~D)を試行した。具体的には、BIM:Building Information Modelingの導入された三次元CAD(ArchiCAD)と、複雑な形状の三次元モデル化およびVPL: Visual Programing Languageによるパラメトリックデザインを得意とする三次元モデラ(Rhinoceros・Grasshopper)を用い、前者での部材配置や各断面の検討、後者での継手仕口や曲面部位といった詳細な三次元モデル化を行うという手順をとる。三次元CADと三次元モデラの連携には、ベンダーにより提供されるアドオンを活用した。この手順において、三次元CADと三次元モデラを行き来品型変更される過程で別の部品として識別されることから、同一の部品の別表現であることを三次元CADにて段階的に記録するといった仕組みを試みた。また、三次元モデラではVPLを拡張して三次元モデルの詳細化を行うが、継手仕口や様々部品に共通して使われる作図技法などをコンポーネントとして整理し、再利用性の高い状態で記録できることを確かめた。全体を通した構法知識としての整理やデータベースの実装は、現在、新たな木造建築の三次元モデル化を行いながら進めているところである。
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