当初予定していた、結と家研究会における「茅(第2回)」「炭焼き」「鉄平石」「漆」等の準備を現地の関係者等と進めていたが、2年間の新型コロナウィルス感染症の断続的影響により、現地調査がすべて中止となった。集落等の地縁コミュニティの紐帯の強い地域であるからこそ、東京から赴くことが難しく、特にご年配の方々への影響に配慮した判断であった。 そこで方針を転換し、事例調査のうち「漆」の回で準備を進めていた、長野県塩尻市の木曽谷に位置する奈良井宿において、リモートで現地関係者と打合せを進め、地域社会の繋がりと暮らしに関するアンケート調査を実施した。これは、本研究において懸案であった、地域コミュニティの繋がりをいかに測定するか、に応えるものである。ただし、現地との調整の結果、地域素材とどう関係しているのかに関しては直接的に質問票に盛り込むことはせず(本来であればインタビュー調査が適切な手法である)、地域素材を広義に捉え、重要伝統的建造物群保存地区である奈良井宿の町並みとの関係等について焦点をあてた。世帯単位を対象にせず、中学生以上全員を対象に行なった全住民アンケートであり、9割近い回収率となった。同時に、域外に暮らす奈良井宿出身の親類へも配布し、一定の回答を得た。 本助成により、アンケートの分析結果をブックレットとして取りまとめ、ハイブリッド形式の報告会の機会を創出した。地域の紐帯の一つの指標であるソーシャルキャピタルが町並みとどのように関係しているのかについて、現在論文化に向けた準備を進めている。 また、本アンケートの一連のプロセスや結果等を各地の招待講演にて発表する機会を頂いた。
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