研究課題/領域番号 |
18K13893
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
佐倉 弘祐 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (90757220)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ラテン文化圏 / 地理的境界 / 社会的境界 / 経済的境界 / 都市の余白 / 第7回国際ユース環境会議 / 2019年度日本建築学会大会 |
研究実績の概要 |
本研究は、萌芽的研究として、特に近年急増中の南欧先進諸都市の市民ガーデンを対象に、<各ガーデンの立地場所の選定(点)、ガーデンと周辺の地域施設・資源との関係(線)、地域内施設・資源とのネットワーク形成(面)=都市空間的視点>を分析・整理した『南欧諸都市市民ガーデン図説集』を作成・公表することを目的として研究に着手した。 南欧諸都市の先進事例を対象とした基礎研究では、スペイン2都市(マドリッド、セビーリャ)とポルトガル2都市(リスボン、ポルト)の合計4都市の市民ガーデン調査を実施した。複数の都市の市民ガーデンを調査することで、ラテン文化圏に共通した市民ガーデンの特徴が存在することが分かった。特に都市空間的視点の中の各ガーデンの立地場所の選定(点)は、都市の地理的境界、社会的境界、経済的境界に存在することを明らかにした。これらの境界に位置する市民ガーデンが社会的弱者のコミュニティー拠点として機能しており、社会情勢の安定を保っている。都市計画において「余白」をどのように配置するべきか、我が国においても重要な知見となり得る。現在、この調査結果を整理し、国際ジャーナルLandscape and Urban Planningへ投稿する原稿を執筆している。 長野市を対象とした応用研究(実践)では、第7回国際ユース環境会議の一環として市民ガーデンワークショップを開催し、現在「まち畑プロジェクト」として実践している3つの市民ガーデンを参加者に案内し、今後の長野市の空き地のあり方についてディスカッションした。また都市空間的視点の中で、基礎研究で言及が不十分であったガーデンと周辺の地域施設・資源との関係(線)について、長野市の実践中の敷地で検討し、その研究結果を「減築による斜面住宅地の居住性と景観の再編に関する基礎的研究-長野市狐池を対象として-」として2019年度日本建築学会大会に投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
南欧諸都市の先進事例を対象とした基礎研究では、事前調査による市民ガーデンの数から、ポルトガルの対象都市の1都市をブラガからポルトへ変更した点、都市空間的視点のうち、ガーデンと周辺の地域施設・資源との関係(線)、地域内施設・資源とのネットワーク形成(面)に関して、現地調査は実施したもののまだ十分に分析しきれていない点が申請書との相違点である。 一方で長野市を対象にした応用研究(実践)では、申請書通りにワークショップを開催したのに加え、基礎研究で不十分であったガーデンと周辺の地域施設・資源との関係(線)を補う形で、長野市の実践中の敷地で検討し、その研究結果を「減築による斜面住宅地の居住性と景観の再編に関する基礎的研究-長野市狐池を対象として-」として2019年度日本建築学会大会に投稿した点で、申請書作成時よりも進展している。
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今後の研究の推進方策 |
南欧諸都市の先進事例を対象とした基礎研究については、2019年度はイタリアの2都市(ローマ、トリノ)の市民ガーデンを調査する。スペイン、ポルトガル同様ラテン文化圏としての共通項を見出せるかどうかを調査した上で、ガーデンと周辺の地域施設・資源との関係(線)、地域内施設・資源とのネットワーク形成(面)に注視して調査を行う。 長野市を対象にした応用研究(実践)では、市民と学生が共同で1箇所空き地を選定して市民ガーデンを建設する。その際に南欧諸都市の基礎研究で分析した都市空間的視点を長野市で応用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前倒し支払請求書を2018年11月に申請したが、その際に、請求額に余裕をもって申請したため、結果的に余りが生じた。この残余金は、次年度(2019年度)のイタリア調査の渡航期間延長、図説集の印刷・製本代として使用する。
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