研究課題/領域番号 |
18K13893
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
佐倉 弘祐 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (90757220)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 市民ガーデン / トリノ / ローマ / 地元企業 / 都市部と都市周辺部 |
研究実績の概要 |
昨年度のスペイン、ポルトガル調査に続き、今年度はイタリアの調査を実施した。今回赴いた都市はイタリア北部に位置するトリノと南部に位置するローマである。 トリノの市民ガーデンの特徴は、企業の社会貢献にある。大規模な野外アートパークを運営しているBunker’s、地元ホームセンターReroy Merlin、総合フードマーケットEatalyなど、コミュニティーガーデンと親和性の高い企業が率先して社会貢献のために建設している動きを把握した。トリノは自動車メーカーFiatと共に繁栄と衰退の道を歩んできた歴史があり、現在新たな形で地元企業が地域コミュニティ形成に寄与している一端を明らかにした。 ローマの市民ガーデンの特徴は、都市部の閉鎖的な市民ガーデンと都市周辺部の開放的な市民ガーデンの対比にある。都市部では、市場内の一角、学校の校庭の一角などを利用した近隣住民による小規模な市民ガーデンが多数存在し、企業や教育機関が運営するものが多く閉鎖的になっている。一方で、都市周辺部には、Orti Urbani GarbatellaやHORTINSIEMEなど誰でも入ることのできる開放的で大規模な市民ガーデンが多数存在し、市やNGOが運営するものが多く、EUからの補助金を利用している場合もあり開放的になっている。 トリノは企業と共に歩んできた歴史、ローマはイタリア人の閉鎖的なコミュニティーを好む性格が反映されており、歴史や文化がイタリアにおける現在の市民ガーデン形成にも強く影響を及ぼしていることを明らかにした。 長野市を対象にした応用研究(実践)では、佐倉研究室まち畑プロジェクト第1弾「すけろくガーデン」を対象に、近隣住民と共に市民ガーデンを造り、佐倉研究室の学生と市民と話し合って構想した将来像が建築設計協議で佳作を受賞した(伊藤一生:だんだん荘、第11回建築コンクール佳作)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
『南欧諸都市市民ガーデン図説集』を今年度中に執筆する予定であったが、まだ作成途中であり、佐倉研究室公式ホームページ「世界のまち畑」での事例紹介に止まっているため(佐倉研究室公式ホームページ:https://shinshu-sakura-labo.com/world/)。
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今後の研究の推進方策 |
申請当初は、次年度に海外・国内研究協力者を長野市に招聘し、情報共有の場を設ける予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大のため、オンラインでの実施とする。海外・国内研究協力者招聘共同シンポジウムをオンラインで開催し、学生、一般人も参加できるよう構想している。 このオンラインシンポジウムの内容を反映させた形で『南欧諸都市市民ガーデン図説集』を執筆、出版する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内協力者との海外出張の旅程が合わずに研究代表者のみで行なったため、次年度使用額が生じてしまった。2年間の海外調査を通じて、ポルトガルの調査が不十分であったため、補足の調査を実施する。
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