研究課題/領域番号 |
18K13900
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
尹 莊植 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 助教 (80803832)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 空き地 / 空き家 / 地域主体 / マネジメント / 利活用 |
研究実績の概要 |
本研究は、これまでの「地区まちづくり」で蓄積された仕組みをベースに近年の空き地・空き家等の利活用手法を取り入れ、低未利用地の発生前後・発生程度に応じて地域主体が継続的に管理・利活用できるマネジメント手法の提示を目指すものである。 2019年度は、まず、地区まちづくりを行っている横浜市をケーススタディの対象とし、横浜市地域まちづくり推進条例に基づき、認定された地域まちづくり組織へアンケート調査を実施した。密集住宅地で活動している地域まちづくり組織の場合、防災の観点から空き家・空き地等の低未利用地の管理・利活用意向が高い一方、低未利用地がまだ不動産としての価値がある一般住宅地の地域まちづくり組織の場合は、低未利用地の管理・利活用意向は全般的に低かった。これらの内容をまとめたものを2020年度内に論文として投稿する予定である。 次に、空き家等整備事業については、本研究の対象としていた横浜市・世田谷区・京都市・高岡市・江津市の関連事業の担当者へヒアリング調査を実施し、活用状況と可能性、課題等を把握した。さらに、ヨコハマ市民まち普請事業の整備事例のうち、低未利用地を利活用した整備団体へアンケート調査を実施し、地域主体にとって低未利用地のメリットは経済性よりは立地性の方を高く評価していることを確認した。また、低未利用地の利活用において関連制度及び制限内容等に関する情報提供と遊休公有地の情報提供などの支援が必要としていることを明らかにした。これらの内容をまとめ、すでに論文投稿しており、審査中である。 しかし、年度末に予定していたイギリス事例の現地調査及びヒアリング調査は、新型コロナウイルスの影響により中止となり、今後の渡航の可能性も低いことを踏まえ、研究計画の修正を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究が対象としている「地区まちづくり条例」、「空き家等整備事業」、「イギリスの空き家関連事例」のうち、「地区まちづくり条例」については、横浜市の地域まちづくり組織へのアンケート調査から地域内の低未利用地の管理・利活用への関心・可能性・課題について把握できた。また、「空き家等整備事業」については、ヨコハマ市民まち普請事業の整備団体へのアンケート調査から低未利用地のメリット・デメリット、利活用際・整備後の持続的利活用における課題・工夫・必要な支援について把握できた。しかし、「イギリスの空き家関連事例」の場合、2019年度末に予定していたイギリスの対象事例へのヒアリング調査が新型コロナウイルスによる影響で中止となり、予定より進捗が遅くなってしまった。今後に向けて、更なる文献調査およびe-mail等を利用したヒアリング調査など、調査方法の変更・修正を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、前年度に実施したアンケート調査の結果をもとに、地域主体による低未利用地の管理・利活用の実態を整理・分析し、その具体的な手法について考察する。具体的には、横浜市の地域まちづくり組織へのアンケート調査から確認できた低未利用地への認識、管理・利活用の意向、可能性と課題、必要な支援等について整理・分析し、一律的に適用は難しいものの、地域主体によるマネジメントが有効となる地域の主要な条件を提示する。 また、ヨコハマ市民まち普請事業の整備団体へのアンケート調査から確認できた低未利用地のメリットとデメリット、持続的利活用に向けた課題と工夫、必要な支援等について整理・分析し、多様な地域主体が円滑かつ持続的な利活用を可能とする要因を明らかにする。なお、イギリスの空き家関連事例については、情報収集を中心に継続するとともに、新型コロナウイルスの状況変化に応じて関連主体へのヒアリング調査の実施を検討しながら、現状の到達点と課題を明確に把握する。 これらから、実際の低未利用地の管理・利活用の実態を把握し、具体的な課題と可能性、限界を明確にした上で、これからの地域主体による低未利用地の持続的マネジメント手法の具体的な方向性を示す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度の後半に予定していたイギリスへのヒアリング調査及び現地調査が新型コロナウイルスの影響により中止となり、その旅費の一部が次年度使用額となってしまった。次年度にイギリスへのヒアリング調査及び現地調査が可能かどうかは、新型コロナウイルスの状況変化を踏まえて判断すべく、不透明なところが多い。そのため、次年度の前半期に、イギリスへのヒアリング調査及び現地調査が実施できない場合は、文献調査を中心とした研究方法に変更し、その分を資料調査の人件費として使用することとする。
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