本研究は、これまでの「地区まちづくり」で蓄積された仕組みをベースに近年の空き地・空き家等の利活用手法を取り入れ、低未利用地の発生前後・発生程度に応じて地域主体が継続的に管理・利活用できるマネジメント手法の提示を目指すものである。 2020年度は、まず、横浜市地域まちづくり条例に基づき、認定された地域まちづくり組織へアンケート調査の結果を分析し、内容をまとめた。条例の仕組みの有効な点については、組織が条例上に認められているため、所有者や関係者と話しやすかったこと、条例にもとづくルール・プランだったため、所有者から協力を得やすかったことなどが挙げられた。一方、運用上の課題としては、低未利用地の所有者情報の把握が難しく、情報提供や協議のために連絡を取ることが難しいこと、条例にもとづいても強制力がないため、合意が難しいことが多く指摘された。これらの内容をまとめたものを論文として投稿する予定である。 次に、空き家等整備事業については、ヨコハマ市民まち普請事業の整備事例を対象に、これまでの実績から提案主体の変化、提案内容の変化、整備場所の変化とともに、低未利用地が継続的に多く利活用されたことが確認できた。また、地域主体は低未利用地のメリットとして、経済性より立地性を高く評価しており、利活用時の支援として、利活用のための関連制度・制限へのアドバイスと地域内の遊休公有地の情報提供を多く必要としていることが確認できた。これらの内容をまとめた論文を日本都市計画学会論文集で発表した。 しかし、イギリス事例への調査は、新型コロナウイルスの影響により、現地調査及びヒアリング調査は断念し、文献調査を中心に進めた。Canopy Housing ProjectとEmpty Homes Programmeの各事業の成果と効果などを確認できた。しかし、当初計画通りに進められなかったため、今後も続けて調査する予定である。
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