研究課題/領域番号 |
18K13903
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
山村 崇 早稲田大学, 高等研究所, 講師(任期付) (20732738)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 創造産業 / 都心回帰 / 都会性 / 産業立地 |
研究実績の概要 |
産業立地の都心回帰メカニズムを、都市特有の多様なアメニティが相互に強化しあいながら有機的に構成する「アーバニティ資本(Urbanity Capital)」と呼ばれる社会共通資本概念に基づいて検証することを目標として研究を進めた。具体的には、以下の3項目を実施した。 1)研究の端緒として、関連する理論の国内外の潮流を文献のレビューを通して整理するとともに、小規模な言語連想実験を実施した。その結果を分析することで、「都会性(Urbanity)」の主要な評価軸を把握した。 2)大都市の感性的特質が創造産業を誘引している事例として、東京都渋谷区「裏原宿地区」におけるアパレルデザイン産業の集積に着目し、事業者に対するヒアリング調査などを通して、事業者間の知識交流の実態を把握した。そのうえで、産業活動における知識交流の分析に「行為」「空間」「場所」からなる理論枠組みを導入することによって、創造産業の集積形成メカニズムを分析した。その結果、「行為」の4モードと「空間」の5モードを抽出するとともに、それらの組み合わせによる「場所」の存在が、創造産業の活動を下支えしていることなどを明らかにした。 3)産業立地の都心回帰が生じている海外事例として、ボストン大都市圏における創造産業の立地変容に着目して、政府統計データと現地調査によって、その実態把握を行った。その結果、ボストン大都市圏では、ICTを中心としたテック系企業が、郊外オフィスパークから都心部へと移転する傾向がみられ、そのことが都心周縁部の再開発を加速させていること、官民の主体によるイノベーションハブ整備などの都市政策がこうした潮流を後押ししていることなどが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね当初の計画にそって研究を進めており、「都会性」の評価軸、創造産業の活動を下支えする「場所」、産業の都心回帰をめぐる海外事例の分析などに関して、順調に成果が出ている。
|
今後の研究の推進方策 |
東京都におけるアパレルデザイン産業の集積メカニズムについては、事業者に対するヒアリング調査を継続してサンプル数を充実し、分析を深掘する。そのうえで、国外のアパレルデザイン産業集積実態(ニューヨーク市ほか)とその要因についての文献調査を実施し既存の知見を整理して、東京の事例特性を相対化し、その特性を把握する。 加えて、東京都心部における創造産業の集積形成実態について、ICTを含む多様な業種・業態を対象として、会社経営情報の個票データを収集し、GISデータベース上に格納する。そして、業種・業態ごとの集積形成傾向を比較分析し、近年の集積変容について詳細に検討する。特に、微細な業種・業態区分による小型集積地の台頭に着目して分析を進める。 さらに、ボストン大都市圏をはじめとする、海外諸都市における創造産業の立地変容については、主に政府レポートを中心とした文献調査と、郵便番号区単位の事業所統計データを用いたGISによる空間解析を通して把握する。そのうえで、東京都心部における近年の創造産業集積の変容傾向の特性を相対化し、その特性を把握する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
全体的に、可能な限り合理的費用での調達につとめた結果、次年度使用額が生じた。特に、海外書籍を中心として資料収集に一定の費用がかかることを想定していたが、海外調査出張時に現地大学の図書館等において十分な資料が確保できたことが、次年度使用額が生じた主な要因である。次年度使用額については、文献調査を充実することと、企業データのサンプル数を充実することに使用する。
|