研究課題/領域番号 |
18K13906
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研究機関 | 釧路工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松林 道雄 釧路工業高等専門学校, 創造工学科, 助教 (50804671)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | BIM / 既存建築ストック / 維持更新 / 予防保全 / 属性情報 / 空間情報 / 類似要素 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、BIM(Building Information Model)のデータ構造と修理記録を手掛かりとし、効果的な施設管理を行うための建物情報活用の手法を開発することにある。具体的には、これらを用いて今後、同様な事故・故障が発生する施設内箇所を推定する手法を開発する。本研究課題の実施内容は次の3つに分かれる。「類似度判定手法の開発」と「BIMデータの構築」、「国立大学法人等施設の調査」の3つである。 2018年度の研究実績は次の通りである。「類似度判定手法の開発」においては、故障の頻度の高い部位として建具(ドア)と屋上防水をケーススタディの対象に選定した。そして、それぞれについて故障箇所を探すためのプログラムのプロトタイプを開発した。建具(ドア)のプログラムでは、故障のあったドアが持つ属性情報に加え、そのドアを含む壁や部屋の属性情報も活用するアプローチを取っている。これら獲得した属性情報の中から、故障に最も関連の深い項目を選択して類似度の高い他のドアを集める。屋上防水のプログラムでは、雨漏りの可能性がある部屋の候補を見つけ出すアプローチでプログラム開発を検討している。具体的には、水漏れが報告された部屋の上部空間を調べている。現在は選択した部屋の上部が内部空間か外部空間かで判別する手法を開発している。建物と故障記録については国立大学施設のものを用いて研究を進めている。「BIMデータの構築」においては、釧路工業高等専門学校校舎の設計図書の収集・画像データ化を行い、BIMデータを構築している。「国立大学法人等施設の調査」においては、国立大学の施設職員に対して施設管理に関するヒアリングを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画に対し、「類似度判定手法の開発」においては、予定通りのペースで進んでいる。ただし、ケーススタディの選定において、申請時の計画では空調・排水設備を予定していたが屋上防水に変更した。屋上防水も故障の多い部位であることからケーススタディの対象として選定している。「BIMデータの構築」においては、年度が開始して早々にBIMデータ構築に専用するワークステーションを購入した。そして、釧路工業高等専門学校校舎の設計図書の収集・画像データ化が済み、BIMデータを構築している。この校舎のBIMデータを使用するまでには至っていないが、他施設のBIMデータがあるため類似度判定手法の開発への支障はない。「国立大学法人等施設の調査」においては、施設職員に対して施設管理に関するヒアリングを実施した。類似度判定手法の開発に向けて必要な情報は収集できている。交付額決定を受けて、研究成果の発表に向けた費用に集中させるため、施設調査を実施するための費用を縮小した。そのため、現地に行って調べるという方法はなるべくとらず、メール等で質問する方法にシフトしている。 2018年度の研究成果については、日本建築学会の年次大会、日本建築学会情報システム技術委員会主催のシンポジウムで口頭発表を行ってきた。また、国際会議CAADRIAのプロシーディングスへの論文掲載が決定し、2019年4月に発表予定である。これらから一定の成果が上がっていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度の研究は次の通りに進めていく。「類似度判定手法の開発」においては、前年度にケーススタディの対象として取り上げた建具(ドア)と屋上防水について、継続して開発に取り組む。建具(ドア)については、属性情報を用いた類似箇所を探すためのプログラムの完成度を高めていくことを目標とする。屋上防水については、引き続き雨漏りの可能性がある部屋の候補を見つけ出すアプローチでプログラム開発を検討していく。具体的には選択した部屋の上部スラブが床か屋上かを判別する手法の開発に取り組む。また、選択した部屋の上部スラブにルーフドレンが配置されているかを判別する手法の開発に取り組む。「BIMデータの構築」においては、釧路工業高等専門学校校舎のBIMデータ構築を引き続き進める。完成次第、類似度判定で用いる。そして、校舎に接続する他施設のBIMデータ構築を始める。「国立大学法人等施設の調査」においては、プログラム開発の進捗に合わせて有用なプログラムとするための意見収集を行う。収集方法については、学会発表や英語論文校閲などの他の出費の様子を見て、現地調査とするかメール等による質問にするかを決定する。 2019年度までの研究成果については、日本建築学会情報システム技術委員会主催のシンポジウムでの口頭発表、国際会議のプロシーディングスへの論文掲載・発表を目指す。
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