研究課題/領域番号 |
18K13907
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 憲吾 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (60548288)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | カンポン / 土地所有 / ブタウィ・ハウス / コミュニティ / 移築 / 花卉市場 / ジャカルタ / インドネシア |
研究実績の概要 |
本年度(2022年度)は、昨年度に引き続き、新型コロナウイルスの影響でインドネシアへの渡航ができなかった。そのためジャカルタ全域のマクロ分析を行うとともに、1950年代から70年代のジャカルタの開発史を整理した。 マクロ分析については、新たに農務・空間計画省/国土庁(ATR/BPN)が公開するジャカルタの地価公示価格データをGISに取り込み、これまでのデータと統合した。以前に実施したジャカルタ州政府へのインタビュー調査によれば、この価格は土地建物税の算出に用いられ、例えば、都心の大通り沿いの土地と、その裏手のカンポンが広がる土地とで価格を変えるなどの調整が行われており、実際の市場価格とは異なる。これを昨年度までに整備した類型別の居住環境の分布や村落潜在性データ(PODES)や人口センサスデータと組み合わせて、地価とカンポンの関係から再開発リスクの高いカンポンなどを分析した。また、これまでに過去に用いられた地価公示価格を取得しており、それらをデータ化して、経年変化の分析作業を進めている。 一方、カンポンの撤去の要因の一つは建築や土木の大型開発である。そこで、ジャカルタ州内における戦後の開発史を整理した。さらに、インドネシア国内で主に日本企業が関係した開発について、敷地の決定や土地取得のプロセスを当時の関係者などにインタビュー調査した。土地取得は現地政府が実施するが、土木開発においては、土地取得の難航や住宅撤去の反対運動によるプロジェクトの遅延があったことが確認された。また、これに関連して、スハルト体制期に開発が進んだ都心部の金融街(通称ゴールデン・トライアングル)のカンポンに関する共同研究の申し出がインドネシア大学の協力研究者からあり、準備を進めている。当該地区はカンポンが広範にわたり撤去された場所だと申請者のこれまでの分析で明らかになっており、撤去や存続の要因が考察できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、マクロ分析では検証が難しい、土地分割のプロセスを対象としていたため、現地調査ができなくなったことで、進捗は芳しくない。そのため、研究期間の延期をおこなった。ただし、その分、マクロ分析のためのデータは着実に増加している。来年度は現地調査を計画しているため、最終年度となるが、ミクロ分析を進めてカンポンの持続性に関する分析を総合的に行いたい。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度となる今年度は、現地でのフィールド調査が可能であるため、以下の点を進めて、これまでの研究を統合した成果を出したい。 ①これまでのフィールド調査で、ブタウィの住人の土地分割・供給において、親族に対しては非公式な土地所有権であるgirikで、血縁関係にない新規流入者には、公的な土地権利のひとつ建物使用権(hak guna bangunan)で取引する傾向がみられたが、他地域のカンポンでもそれが確認されるかをフィールド調査で検証する。 ②PODES、地価データ、人口センサス、居住環境類型などを用いて、カンポンの撤去や存続に関する制度的、経済的、政治的要因を考察する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で予定していた現地調査ができなくなったことが大きな要因である。今年度は、実地調査を再開し、最終年度として成果をまとめる。
|