研究課題/領域番号 |
18K13909
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小見山 陽介 京都大学, 工学研究科, 助教 (40815833)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | クリスタル・パレス / 構法史 |
研究実績の概要 |
・クリスタル・パレス建設時の同時代資料(図面、文献、絵画、版画)を収集し、1850年の建設開始から1936年に焼失するまでの間にクリスタル・パレスに起こったイベントに際して残された記録として整理することで、建設プロセス理解の構成要素となる情報源を明らかにした。特に記録史料の残る重要な出来事として浮かび上がったのは、①博覧会会場としての建設、②解体とシドナムの丘への移築(およびその過程で起こってしまった人命を損なう崩落事故)、③度重なる補修を経て資金繰りに苦しんだ末の売却(オークション)、④火災による焼失(および、それ以前にも起こっていた小規模火災)である。 ・これら同時代資料でクリスタル・パレスがどのように描写されていたのかを把握し、残された28枚の施工図面抜粋を読み込むことで、「クリスタル・パレスは誰により如何につくられたか」を考察した。特に、通常第一設計者として知られるジョセフ・パクストンだけでなくクリスタル・パレスの建設に一定の貢献を果たした共同者たちの存在や、「鉄とガラス」の建築として知られるクリスタル・パレスにおける木材使用箇所という視点を提示した。 ・クリスタル・パレスと関連する設計者や施工者らによって同時代に建てられた類似建築との比較を部材の形状や接合部に着目して行うことで、クリスタル・パレスに適用された技術を相対化し、建築史上で神話化されたクリスタル・パレスを、市井の建築も含めた生産史・構法技術史全体の流れへと接続しうるいくつかの観点を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
想定した手順に従い研究作業を進め、雑誌論文、プロシーディング、学位請求論文のかたちで各段階の研究をまとめることができた。また、構法史の国際学会で研究の途中経過を発表し、現地イギリスの構法史研究者とも活発な議論を交わすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を整理し、クリスタル・パレスの特徴的な部材の3次元モデル化、およびクリスタル・パレス建設に携わった人物および関連技術相関図の作成を行う。
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備考 |
本研究課題の成果の一部は、学位請求論文『クリスタル・パレスの建設について:建築構法史学の試み』としてまとめられた。
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