研究課題/領域番号 |
18K13910
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
中山 利恵 京都工芸繊維大学, デザイン・建築学系, 准教授 (30770185)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 洗い / 洗い屋 / 色付け / 引札 |
研究実績の概要 |
今年度も木肌処理技術の史料調査と、これまでの研究を総括し書籍化する作業を行った。 京都府文化財保護課の担当者様に情報提供を頂き、内務省社寺課による大正7~9月の工事をまとめた『妙法院庫裏修理一件書類』に、洗いの記録がある事が発見され、翻刻と内容の分析を行った。庫裏は竈からの煤で特に小屋梁と天井・建具の煤汚れ落としが計上されている。三条通寺町角の「鷲山金次郎」と河原町通り御池上ルの木口為二郎という二名の洗方から相見積を取り、価格の安い鷲山に請け負わせていた。さらに苛性曹達と蓚酸が河原町通二条南入の福住清兵衛により別途見積がされていた。また、2021年度に報告した洗いの引き札は、大阪京町堀籠屋町の「鷲山金次郎」が、森田九兵衛と辻政七という二人の職人を独立させ、京都へ出張所を出店したことを宣伝するための引札だった。大坂と京都で地所違うが同性同名の人物であった。引札は書かれている地名や値段から明治初頭の発行と推察できるため同一人物とは考え難く、何らかの理由で大阪本店を畳んで出張所に名前を譲ったか、襲名した本店自体を京都に移した可能性がある。大正期において、鷲山金次郎の名が洗い屋として引き継がれ、京都市内の文化財修理の下請けを行うほどに活躍していたという事実が読み取れた。 さらに、学位論文からこれまでの研究を書籍としてまとめ、2023年度 研究成果公開促進費(学術図書)により『「洗い」の日本建築史――建築の経年と木肌処理技術』を東京大学出版会から出版させて頂いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響により史料調査とこれまでの研究のとりまとめに注力することで、一定の研究成果を上げ、書籍を出版することができた。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の影響により実現できなかった北欧調査やその他遺構調査を進めると共に、書籍に書ききれなかった成果について論文等で発表を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ過や学内業務等の多忙により、遠方への移動を伴う調査や謝金を伴う学生同伴の調査などができず、補助事業期間再延長により次年度へ延期する事が妥当であると判断したため。
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