研究課題/領域番号 |
18K13911
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研究機関 | 京都美術工芸大学 |
研究代表者 |
岡北 一孝 京都美術工芸大学, 工芸学部, 講師 (00781080)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | リノベーション / サン・ピエトロ聖堂 / 古典主義 / ルネサンス建築 / 創造的修整 |
研究実績の概要 |
2020年4月に出版された『リノベーションからみる西洋建築史』において論じたように、新サン・ピエトロ聖堂の建設は、旧サン・ピエトロ聖堂のリノベーション(保存と再生)であり、各建築家が旧聖堂を尊重しつつ創造的修整を重ねた結果であったといえる。したがって、帝政期ローマの大空間の再現を狙った古典主義的観点からの新聖堂の造営事業という見方は大きく修正すべきだと指摘した。このルネサンスにおける古典主義を再考するという観点は、2020年12月に出版された「古典主義者アルベルティ再考:マラテスタ神殿の凱旋門モチーフの意図とその受容」(『古典主義再考I 西洋美術史における「古典」の創出』、中央公論美術出版)においても強調している。 さらに、新サン・ピエトロ聖堂の建設においては、ブラマンテ、ラファエッロ(画家-建築家)と、ミケランジェロ、ベルニーニ(彫刻家-建築家)では、既存建築への介入の仕方や、空間構想が大きく異なることを指摘した。また彫刻家が描く建築素描や図面と、画家のそれとは性質が異なり、「創造的修整」としての建築へのアプローチにも差異があると述べた。つまり、彫刻と建築の構想や創作手法の影響関係を指摘すれば、新たな建築史研究の道を切り開けるのではないかと考えたのである。この点は、2021年からの研究テーマである「ルネサンス期の彫刻家-建築家による建築創作手法の特質の解明」(科研費若手研究、課題番号:21K14339)へと展開することとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の成果は次の研究課題へとつながり、新しい研究テーマとなった。また本研究と関連するかたちで、セルリオの建築書の抄訳の刊行も2021年5月に予定されている(池上俊一 監修『原典 イタリア・ルネサンス芸術論【上巻】』、名古屋大学出版会、2021年5月刊行)。一方で、2020年度は新型コロナウイルス感染症の感染拡大が続いたため、本研究での結論的成果を海外での学術会議等で発表することが叶わなかった。現地での資料収集や建築観察・分析についても持ち越したものがあるため、2021年度へと研究計画を延長した。2021年度はいくつかのテクスト分析によって、これまでの成果をブラッシュアップして、論文としてアウトプットと、難しい社会情勢ではあるが、できれば海外での学術会議等での発表を行いたい。
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今後の研究の推進方策 |
在ヨーロッパの研究者との交流やディスカッションについては、ZOOM等のビデオ会議システムを使って、円滑に進めることができているため、そうした技術も今後も積極的に導入し、できる限り研究内容の向上を進めていく。昨今の情勢からイタリアでの現地調査が計画通りに進まないことを想定し、建築、絵画の対象を少し削減し、よりテクスト重視の研究計画へと変更する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の影響により、イタリアへの出張が予定よりも短縮され、旅費として計画していた金額が大幅に変更になったため、次年度使用額が生じた。2021年度においても、3月上旬に海外出張を予定しているが、状況が許さない場合は、できるだけ早い段階でそれを判断し、文献史料を重視した研究へと修正する予定である、その分、資料・書籍代に多くを充てる予定である。
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