研究課題/領域番号 |
18K13921
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
樋口 諒 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (00815946)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 炭素繊維強化プラスチック / 計算機援用設計 / 均質化法 / 拡張有限要素法 / 異形炭素繊維 |
研究実績の概要 |
本研究では、様々な微視構造(繊維の断面形状、直径、配置のばらつき)を有する炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の巨視的な弾性・破壊特性を包括的に調査可能な数値解析手法開発に取り組んでいる。具体的には、拡張有限要素法(XFEM)、均質化法、モンテカルロ法を組み合わせた独自の微視構造解析ツールを開発している。提案ツールの特徴はXFEMを導入することで微視構造をメッシュと独立にモデル化可能となり、従来手法では実現困難であった、膨大な微視構造候補に対する網羅的な数値解析的調査が可能となる点である。 初年度(平成30年度)においては、まず弾性特性の評価手法確立を目標に開発に取り組んだ。開発手順としては、まずXFEMコードを開発し、次に均質化法、モンテカルロ法を統合して微視構造解析ツールを構築した。さらに、開発手法を用いて、様々な繊維形状のCFRPの巨視的な弾性特性評価を実施し、弾性特性の繊維形状依存性を評価した。初年度に得られた成果としては、①XFEMはFEMと同程度の予測精度を有すること、②微視構造解析ツールが通常形状・通常径のCFRPの弾性特性(実験値)をばらつきも含めて評価可能であること、③開発手法を用いた非円形繊維のCFRPの解析により、四角形繊維では円形繊維に比して繊維直交方向ヤング率、せん断弾性係数が向上し得ることが明らかとなったこと、などが挙げられる。特に、③の知見は過去に報告されておらず、そもそも様々な繊維形状の弾性特性を比較した数値解析もなされていないことから、本研究の独自性であるといえる。 該当研究の成果は、既に今年度の国内学会3件、国際学会5件にて発表済みであり、国際誌へ論文を投稿中である。さらに、来年度も国内学会3件、国際学会3件にて発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請時の計画では、平成30、31年度を通じてXFEM・均質化法・モンテカルロ法を統合した微視構造解析ツールを開発し、平成32年度に非円形繊維の弾性・破壊特性評価を実施する予定であった。現在の進捗が「当初の計画以上に進展している」と判断する根拠について以下に述べる。 初年度(平成30年度)においては、弾性特性評価までではあるが、微視構造解析ツールの開発および妥当性検証が完了した。さらに、非円形繊維からなるCFRPの巨視的な弾性特性評価を実施し、巨視的な弾性特性に関する非円形繊維の円形繊維に対する優位性を確認した。これらの内容は一部ではあるが平成32年度の実施内容までを含んでいる。今後、破壊特性評価へと拡張する必要があるが、全体のフレームワークは開発してきた弾性特性評価手法と共通であり、必要なのはXFEMの拡充関数、樹脂の構成則など細部の改良となる。このため、破壊特性評価手法の開発に関しても一定の目途が立ったといえる。 以上より、初年度の研究進捗状況としては、計画段階よりも前倒して進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度(平成30年度)までに弾性特性の評価手法を確立したため,今後は破壊特性の評価に取り組む。具体的な開発手順としては、まずXFEMコードを改良し、次に樹脂の塑性・損傷モデルを開発する。 XFEMコードの改良においては、XFEMの拡充関数にランプ関数だけでなくヘビサイド関数を加えることで、繊維/樹脂界面でのひずみ場の不連続性、破壊発生時の変位場の不連続性をメッシュと独立に導入可能なXFEMコードを開発する。並行して、樹脂の塑性・損傷挙動を再現可能な構成則モデルの開発にも取り組む。開発手法の妥当性検証として、通常の繊維形状・繊維径のCFRPを対象とし、巨視的な破壊特性評価を行い、実験結果(文献値)と比較する。 さらに、開発手法を用いて様々な繊維形状での巨視的な破壊特性評価に取り組み、破壊特性の繊維形状依存性を明らかにする。本項目は研究計画では平成32年度の実施項目としていたが、開発状況次第で可能であれば前倒して平成31年度に実施する。
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