研究課題/領域番号 |
18K13923
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡邉 保真 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (60736461)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 航空宇宙工学 / 気流制御 / 放電 / プラズマフィラメント / Q-DCプラズマ / 動的モード分解 / 超音速 / 極超音速 |
研究実績の概要 |
平成30年度は主として1.放電気流制御特性調査とそこでのプラズマフィラメント挙動解明の為の実験・数値解析、及び2.当初平成31年度に実施予定であった省エネルギー放電気流制御の為のパルス放電時プラズマフィラメント挙動の解明について一部を繰り上げて実施し放電気流制御効率および高速応答性について調査した。 1.将来型高速輸送機への応用を想定し、電極列で生成したプラズマフィラメントによる気流制御特性解明のため、米国ノートルダム大学超音速極超音速風洞SBR-50にて実験及び数値解析を行った。実験では極超音速機や宇宙往還機等のフラップを模した斜面を持つ模型を製作し、前方に設置した電極列にてプラズマを発生させ斜面上の圧力からフラップに作用する力を推算した。放電気流制御によりフラップ面に作用する圧力が急減少する事が判明した。圧力変動値及び電力の間には温度をパラメータとして強い線形関係がある事を発見した。高速気流のエンタルピーに対する比プラズマ電力と相対圧力変動値との間にも別途強い線形関係を発見し、これらの比により投入エネルギーに関する気流制御効率を算出した。これらの線形関係により放電気流制御を実用化する上で必要となる重要な知見を得られた。フィラメント挙動については動的モード分解法を応用することで特性周波数が明らかとなり、プラズマ電圧の特性周波数と一致することが判明した。装置の制約から実験が難しい気流・放電条件については数値解析によりプラズマからの加熱量と圧力制御量について相関関係を調査した。2.パルス放電による気流制御特性について250Hzから2.5kHzに渡って変動させ調査した。圧力応答時間は100μs~300μsと高速でありフラップ-プラズマ間での高温な剥離領域形成によって引き起こされる事が判明した。一連の成果は平成30年度開催或いは今後開催される国際会議および論文誌に投稿済みである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
全体として当初計画内容は概ね順調に達成した。これに加えて次年度実施予定であったパルス放電時の気流制御特性検証の一部を実施し高速応答性に関しての重要な知見を得た。さらに圧力変動値の気流条件・放電条件への複数の線形依存性に対する関係の発見、プラズマフィラメント挙動の動的モード分解による挙動特性周波数の解明など当初計画を超えた、或いは想定外の重要な進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は基本的には計画通り、本年度までに解明した気流制御効果の圧力・温度・プラズマパラメータへの依存性をパルス放電の場合を含めて実験および数値解析により詳細に検証する。本手法の要となる制御効率の気流条件等との関係性を解明し、本手法による超音速機・極超音速機での放電空力制御の有効性について調査することで更に優れた成果の創出を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度研究成果を投稿した論文が本報告書作成時点においてまだ査読中であり、この論文の投稿・掲載費分について次年度使用額が発生した。 さらに、放電気流制御効果を広範な気流条件で検証するために必要となる極超音速風洞実験を実施するため、年度をまたいでの国際出張を行った。交付額一部を出張期間後半の出張経費とするため次年度使用額が発生した。本出張での実験によって得られた気流制御特性を合わせることで多様な気流条件での制御特性を多方面から明らかにでき、本年度研究報告進捗状況に記載した通り当初想定した以上の研究成果を得る事ができた。 今回発生した次年度使用額分は上述の論文掲載後の投稿・掲載費および実験に係る出張後半に対する航空券費用として使用する予定である。
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