近年、1 kg - 100 kg級人工衛星の地球観測や理学観測において、高解像度の画像や観測データ取得などより高度なミッションが検討されている。これらのミッションでは望遠鏡などの観測機器を目標に高精度に指向させて安定化させる姿勢変更が重要となるが、その小さな慣性モーメントから環境姿勢外乱の影響を大きく受けることが多く、意図した姿勢変更を達成できないことがある。本研究では「衛星スケールにより姿勢ダイナミクス・運動がどのように異なるのか」を解明し、小型になるほど影響を大きく受ける環境力を利用することで高精度な姿勢制御を達成することを目指して研究を進めた。本研究では特に非対称形状の磁性体が地球環境磁場環境下において誘起された磁気モーメントによりはたらく姿勢トルク(形状磁気異方性による姿勢トルク)に注目して研究を進めた。 2018年度に得られた形状磁気異方性によるトルク強度は地球磁場強度の二乗に比例することから磁場強度が強い領域においては通常よく考慮される残留磁気モーメントによる外乱トルクよりも大きな姿勢トルクが生じることが明らかになった。そこで2019年度はこの磁気トルクの影響を低減する手法について検討を行った。2018年度得られたモデルから考察を行い、磁性体の配置がn相回転対称(n>2)である場合、対称軸周りのトルクが生じないことを示した。これにより対称軸が異なる方向に3軸以上持つといかなる方向の磁場に対しても磁気トルクをキャンセルできることを示した。
|