研究課題/領域番号 |
18K13926
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
小澤 晃平 九州工業大学, 大学院工学研究院, 助教 (90801879)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ハイブリッドロケット / 低融点液化燃料 / 境界層燃焼 / 燃焼可視化 / 環状流 / 燃焼振動 |
研究実績の概要 |
今年度は昨年度末から実施した、液化ワックス燃料が流動・飛散する過程を可視化する大気圧中の燃焼実験を継続した後、音速ノズルを燃焼器排気口に取り付けることで、ワックス燃料の超臨界圧である0.59MPa以上の圧力での燃焼実験を行った。 高圧条件でも昨年度と同様に背景散乱光でワックス燃料の拡散火炎自発光を打ち消して液化燃料の流動を可視化することを試みたが、現在使用しているメタルハライド光源に対して燃料の自発光が激しく、拡散火炎を打ち消すことができず、拡散火炎によってワックス燃料の流動を判別することが困難な結果となった。散乱光作成のための拡散用フィルムの変更やカメラと燃焼器の間にバンドパスフィルタを設置するなどの光学系の改善も試みたが、状況は改善されなかった。従って、高圧条件下ではストロボやパルスレーザーなどの、より強力な光源が必要になると考えられる。 一方、燃料後退量から燃料後退速度を概算した結果、燃料後退速度は特に高圧下で加速度環境の違いが顕著になるという予備的な結果を得た。昨年度に引き続き、高圧下でも燃焼可視化実験を縦置き(流路方向に重力加速度がかかる)と横置き(燃料後退面に鉛直下向きに重力加速度がかかる)で行い、縦置きかつ高圧条件で20~40%程度燃料後退速度が増加した。 また、拡散火炎の振動には一定の規則性があることが目視で確認されたため、燃焼器内の輝度を高速フーリエ変換して周波数を分析した。縦方向の1次音響振動およびKarabeyogluの提案するハイブリッドロケット固有の振動燃焼モードであるThermal-Combustion-Gasdynamic (TCG) coupled systemの、固体燃料-境界層燃焼間に固有振動モードとよく一致することがわかった。これは、燃焼可視化によってハイブリッドロケット固有の振動モードを検知した世界初の事例ではないかと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画では初年度中に高圧条件での可視化実験を行い、本年度にロケットスレッド上での高加速度環境で燃焼可視化を行う予定であったが、研究開始当初に用いた燃焼器では流路前後部の燃焼器本体と可視化窓の段差で再循環領域が形成されてしまい、適切な燃焼可視化ができなかった。昨年度は改良型燃焼器の開発を優先したため、そのまま現在も影響し、当初予定から半年程度の遅れが生じている。 更に、改良型燃焼器では矩形固体燃料の側面も後退してしまい、厳密な後退速度計測が難しいことがわかった。このため、燃焼可視化は後退速度計測と異なる手法を採る必要があると考えられる。 現在は、本年度秋から高圧燃焼実験の継続と本格的にロケットスレッド実験用の実験装置開発に着手している。ハード・ソフトともに60%程度の完成度であり、開発を継続中である。
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今後の研究の推進方策 |
大気圧燃焼で取得した燃焼可視化データの定量評価に着手していないため、燃料表面の液膜の波長や振幅を画像認識プログラムによって解析し、加速度環境との相関を調べる。 また、ロケットスレッド上の実験系開発を継続し、完成・機能試験を大学内で実施した後、室蘭工業大学のロケットスレッドで加速度環境下での燃焼実験を実施することを目指す。 一方、液化燃料として流れ出る燃料流量や総燃料後退速度の評価については、矩形燃焼器と矩形燃料を利用する場合は酸化剤質量流束と燃焼面積が評価できないため実験系として不適当であることがわかった。別途円筒形状の燃焼器とグレインを製作して、燃料後退速度取得を評価する燃焼実験を独立して実施する。こちらもロケットスレッドの加速度環境下で実験を実施することを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
ロケットスレッド上の加速度環境実験の計画が遅延したため、旅費および実験系開発にかかる経費が一部繰り越された。 ロケットスレッド実験用の消耗品費、実験旅費、円筒グレインの開発費を次年度使用額から計上する予定である。
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