探査機カプセルの火星大気突入環境を模擬した高エンタルピー気流を膨張波管にて生成し、二酸化炭素の吸収線を狭線幅のレーザーを用いて計測した.気流維持時間は、数十マイクロ秒程度と非常に短いものの、レーザー波長を数十kHz程度の比較的高い繰り返し周波数で高速掃引することで、衝撃波到達からテスト気流、膨張波の到達までの吸収スペクトルを数百マイクロ秒の間、連続的に捉えることができた.分子である二酸化炭素の赤外吸収スペクトルは、多数の遷移がオーバーラップし複雑であるものの、的確な波長選定により、ドップラー拡がり評価が可能となり、並進温度を算出した.その結果、膨張波管における気流の並進温度は、熱化学平衡を仮定して算出される理想的な値よりも高いことが明らかになった.これは、同装置を用いた他の研究において計測された発光分光スペクトル解析からの振動回転温度の結果と矛盾しないものであった.平衡仮定の理論値よりも高い温度である主な原因として、理想的には無反射にて衝撃波が伝播するとされる膨張波管装置の第二隔膜において、微小であるが反射が生じていることが考えられる.学会参加の際に、世界の他の膨張波管を用いている研究者との意見交換を実施し、我々の用いている第二隔膜をより薄いフィルムへと変更することで反射を抑えられると考え、現在隔膜変更の効果を評価中である.加えて、二酸化炭素の再結合反応流れ場を生成し、本研究のレーザー計測と従来の発光分光を組み合わせながら、温度分布を取得することで、再結合反応レートを評価することを計画中である.
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