日本南岸流速極値推定のための高解像度海洋ダウンスケーリングに関しての検討を行った。研究初年度から二年度にかけては黒潮と潮流が存在する強流域である伊豆諸島を対象に数値実験を実施した。その結果伊豆海嶺上では黒潮が非大蛇行流路を取る際に潮汐流と島の存在によって冷水が比較的広い範囲に分布されることを発見した。この結果については2020年に雑誌論文として出版された。 また、海洋数値モデルにおける潮汐の再現性を向上させる方法について令和元年度からスペクトラル・ナッジングの適用に関する検討を続け、令和二年度ではEnvironment and Climate Change Canadaの研究者と共に潮汐周期の変動に関して、海面高度の修正ではなく、流速の修正を行うことで質量保存則を満たしながらスペクトラル・ナッジングを実施する手法を検討した。スペクトラル・ナッジングを通じて潮汐成分に関して、流速の修正によっても海面高度の再現性が向上することが確認されたため、雑誌論文としてまとめ、Ocean Modelingに投稿した。なお、令和3年3月時点では査読中である。 なお、最終年度である令和二年度は世界的な新型コロナウィルス蔓延拡大の影響を受けて参加を予定していた海外学会の中止が相次ぎ学会発表の機会を逸し予定していた研究計画を修正せざるを得ない結果となったが、本研究の次のステップに繋がる知見を得ることも出来た。計画外ではあるが、太平洋の北西部に位置する日本南岸の流速極値を推定するには長期間の計算実施が適切であるという見地に立ち、海洋数値モデルNEMOを用いた双方向ネスティングを試験的に行い、今後に繋がる知見を得ることが出来た。
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