本研究では、これまでになかった熱水流量の定量的観測方法の開発を行い、実際の深海底における熱水噴出孔において長期間観測を行うことで、熱水鉱床の「生産量」を定量的に評価するための手法を創出することを目的としている。 最終年となる本年度においては、熱水の温度分布を計測するための装置を開発し、その検証を行った。ROVを用いた計測では、その絶対位置精度を担保することが困難である事から、グリッド状に温度計測素子を配置した熱水温度分布計を考案し、計測に供することとした。熱電効果を用いた計測であることから、計測機器の回路構成が計測誤差に与える影響が懸念されるため、実験室においてその評価を行い、その適用可能性について示した。 また、中部沖縄トラフにおける実深海の熱水噴流の計測を試みた。海況の関係から温度分布計測までは至らなかったものの、非常に活発な熱水噴流の流速分布計測を行い、そのデータ化を行うことが出来た。得られたデータを基に総合的に熱水の流動を評価し、定量的観測につなげるための基盤につながると考える。一方で、ROVを用いた計測特有の課題点もいくつか浮かびあがった。例えば、上述の絶対位置の把握や、ビデオ情報から自然熱水噴出孔の探索を行う技術などがあることで、より潜航の効率を向上することができるであろう。 前年度から引き続き評価を行っている熱水起因の物性変化が計測場に存在する際の影響についても継続して評価を行い、超音波ドップラー法を用いた流体計測において重要な反射体について、熱水場においてはどのような取り扱いが可能かについて検討を進めた。
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