本研究の目的は、AISデータを用いてAISを搭載していない船舶もしくは物体(以下、AIS非搭載障害物)が存在しうる位置を推定する手法を構築することである。 初年度の実施事項を以下に示す。 AIS非搭載船の航行状況を分析することを目的とし、東京湾を対象とした位置情報を含むレーダー情報をデータベース化した。レーダー情報は、同一船と考えられる情報毎に自動的に識別番号がラベリングされているため、同一の識別番号を時間順に並べることにより航跡情報が取得でき、AIS非搭載船の典型的な航行状況を分析することが可能である。なお、レーダー情報は、東京海洋大学の先端ナビゲートシステムで保存している情報を提供いただいた。 AISデータをもとにAIS非搭載障害物が存在しうる位置の推定方法の概略を検討した。位置の推定方法は、大きくは、(1)本船(AIS搭載船)が受信したAISデータから、AIS搭載船(B船)が不自然な変針を行ったデータを抽出する。(2)変針して避けた場所に物体との衝突エリアが存在すると仮定する。(3)レーダー情報を分析することによって得られたAIS非搭載船の典型的な航行状況から、衝突エリアを通航する可能性がある船舶の進路および速力を推定する。(4)上述(2)(3)の情報から、AIS非搭載障害物の位置を推定する、の手順を持つ。 実際にAIS非搭載障害物の存在や位置を推定するには、さらに検討が必要である。
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