研究課題/領域番号 |
18K13946
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
出口 充康 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海洋工学センター, 技術副主任 (50725645)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 水中音響通信 / デジタル通信 / ドップラーシフト / 時間変動 / 非定常 / 音響通信 / チャネルレスポンス推定 |
研究実績の概要 |
本研究では、非定常ドップラーシフト環境下でのマルチパス環境が水中音響通信にもたらす影響についてシミュレーションによって解析し、通信条件などへの依存性を検証する。さらに、それに対して有効な新規手法を提案する。また、水槽実験、海域試験によって提案手法の有効性を実証する。 本年度は、非定常ドップラーシフトを伴うマルチパス環境を反映した伝搬シミュレータを製作し、帯域幅や動揺状況を変数としたパラメトリックスタディーを実施した。結果として、非定常ドップラーシフトを伴った直接波、およびマルチパス波の影響は、動揺の大きさや動揺の速さだけでなく、通信で用いている帯域幅にも依存している事が判明した。 単一搬送波を用いた水中音響通信では、通信のデータシンボルごとにチャネルレスポンスの推定を更新するのだが、帯域幅が大きい時、そのデータシンボルの間隔が短くなる。本年度のシミュレーション結果は、広い帯域幅での通信では、チャネルレスポンス推定の間隔が短くなるため、非定常ドップラーシフトへの追従の面で有利となる事を定量的に示している。加えて、Frequency Division Multiple Access(FDMA)方式を用いた水中でのマルチユーザー通信では、原理的にユーザー数に比例して帯域幅が狭くなる事が知られている。本年度の研究結果は、そのような狭帯域通信の場合に、非定常ドップラーシフトの影響が大きくなる事を示唆している。 また、上記の結果を踏まえて、非定常ドップラーシフトに対して有効と思われる新規手法を考案し、同条件での動揺を加えた通信シミュレーションを実施した。次年度に、その評価を進める予定である。 さらに、本年度に受波器アレイの台座を製作した。次年度、製作した台座を用いて水槽実験を実施する予定である。さらに、次年度の水槽試験のための準備のうち、音響信号収録で用いるソフトウェア開発に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シミュレーションの解析結果は得られ、従来手法での評価は完了した。加えて提案手法の有効性も概ね確認されているが、改善効果のより詳細な解析が一部残っている。一方、次年度の水槽試験の準備に関しては、当初の予定にはないソフトウェア開発に着手できている事から、総合的に見て概ね順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、水槽試験を実施する予定である。本年度に得られたシミュレーションの解析結果を反映して、主にピッチ、ロールを模擬した運動を与える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定よりわずかに受波器アレイ製作費が安価であったため。 次年度の水槽実験における消耗品に使用する予定である。
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