研究課題/領域番号 |
18K13948
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新井 崇俊 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (10726574)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 配送計画問題 / 施設配置問題 / シェアリングエコノミー / 地域計画 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,小売店や飲食店で働く者から食料品アクセス問題を抱える者まで,多世代の人々が共創できるコミュニティを支える配送システムを提案することである.具体的には,シェアリングエコノミーを配送システムに組み込むことで,輸送体の回送距離短縮,配車の高効率化を図り,利用者と事業者の双方にとって望ましい持続可能な配送システムを構築することである.本年度は研究計画に沿って以下の研究を行った. 1.配送範囲及び配送エリアの策定:既存宅配サービスの各デポを中心とするVoronoi図を描き,各領域面積を円に置換した半径を求め,大半は1.0-2.0kmであることを確認した.本分析対象は,他店舗を巡回することなくデポから商品を顧客に届けるサービスであったため,買い物代行サービスの制約条件を加味すると,本システムの配送範囲は既存サービスより小さい領域とすべきと考えられる. また本配送システムの実データを用いた検証エリアとして,2で挙げる2つの地域を選定した. 2.検証エリアのデータ整備と現状把握及び基盤モデル構築:東京都の青梅駅,石川台駅を中心とする半径約1.5kmエリアの街路ネットワークデータを本配送システムの検討地域として整備した.当該エリアは起伏に富み,エリア内に飲食店や最寄品を取り扱う小売店(いずれもiタウンページより取得)が徒歩数分圏内に存在しない領域があった.整備したデータは交差点をノード,街路をエッジとし,各建物アドレスをノードに付加したデータで,一方通行や居住者専用道路等の制約条件を考慮したデータとした.本年度は上記エリアにおける任意地点を起点とする時間距離分布を把握することで対象地域の都市構造を把握するとともに,基礎モデルとして,デポからいくつかの訪問先を回る巡回経路を総当たりで求めるプロトタイプモデル実装しその挙動確認を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究は,次年度以降行う研究ためのデータ整備を含む基礎研究であり,研究の深度は概ね順調である.一方通行等の制約条件や建物のアドレスマッチングによる情報を付加した街路ネットワークデータ整備は,オープンソースデータのクレンジングのみならず,現地調査を適宜行い,居住者専用道路情報等にデータに反映されていない局所情報も加味したデータとする必要があるため時間の要する作業であった.そのため本年度は2地域のデータを整備に限られたが,本配送システムのプロトタイプモデル及び任意地点を起点とする時間距離分布等を把握できる汎用モデルを構築したので,次年度以降,他地域の選定やデータ整備が順調に行える状態である.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,(1)シェアリング配送計画問題の定式化及びエージェントが集荷した商品を再分配する一時的なデポ(Temporary Depo以下TD)の配置問題の定式化,(2)数値実験による提案法と既存法の性能比較,(3)高速化アルゴリズムの開発を行う予定で,(1),(2),(3)は本研究の基盤となる.(1)では,一の需要に対する複数のタスクを数人のエージェントが分担するという本研究の特徴かつ制約条件と,時間枠制約,積載量制約,部分巡回路制約等買い物代行サービスを考える上で当然加味すべき制約条件を整理しながら定式化することで,(2)において厳密解を求めるだけでなく,本問題の構造に対する洞察を与えるとともに効率的な近似解法を導くための指針を得ることを期待している.また,本配送システムの高効率化には,いかにTDの最適配置を導くかが肝となるが,ここでは,ミニサム基準やミニマックス基準をベースに,施設配置問題の先行研究を参照しながら合理的な配置基準を探る.(2)では,(1)を用いて,混合整数計画問題として厳密解が求められる範囲において解を求めるとともに,本年度に構築した街路ネットワークデータを用いて,より大規模な問題に対し配送計画問題の古典的な近似解法である「ルート先・クラスタ後法」,「クラスタ先・ルート後法」等と本配送システムの比較分析を数値実験により行うことで本システムの有用性を検証する.(3)では,局所探索法の性質に着目し,最適解への過程で現れる局所最適解をデータベースとして保持することで,計算コストを削減するなど,高速化アルゴリズムを開発を試みる.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の構造に対する洞察を与えるため,本年度は研究代表者自身がプログラム作成及びデータ整備を行いながら研究を進めた.そのため人件費・謝金は必要なかった.また,本年度はプロトタイプモデルの構築に専念するとともに,データ整備エリアを東京に限ったため旅費が発生なかった.次年度には,学会発表のための旅費,データ整理のための謝金,参考書購入費を必要としている.
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