本研究では,食料品アクセス問題に対し集配送計画問題からアプローチを試み,供給者にも需要者にもメリットがある水平タスクシェア型集配送計画問題(SDPT)のモデル化とその近似解法を示した.本年度は,研究計画に沿って以下の分析を行った. [1]アイテムの積み替えを行わない代表的なモデルであるCFRS,アイテムの積み替えを陽に考慮した既存モデルとの比較実験を行い,設定したいずれの問題型においても,移動コスト削減という観点からアイテムの積み替え効果が大きいことを確認し,提案手法であるSDPTの優位性を検証した. [2] 要求に紐づくアイテムの集荷地点が複数あることはSDPTの特徴の一つである.この特徴が移動コストに与える影響を把握するために,訪問先のノード数を固定しながら要求数を変化させた実験を行った.要求数が増加するに従い移動コストは減少することを数値的に確認した.また,TD最適配置の空間的分布の凝集・分散傾向の類似性と差異性を示した.加えて,エージェントの作業負荷低減を目指して定式化した3つの目的関数値において,どの2つにもトレードオフ傾向があることを明らかにした. [3]東京都あきる野市を対象とした実験では,ネットワーク空間において提案手法を実装し,投入リソースが効率的に使用されている状況を定量的に評価し,提案手法が意思決定を支援できることを示した.また,ネットワーク空間におけるTD最適配置の空間的分布傾向を明らかにした.連続空間やネットワーク空間におけるTD最適配置の空間的分布傾向を把握したことは,TD配置の目算を立てることのみならず,高速化を目指して効果的にTDの探索範囲を限定するという,アルゴリズム改良の指針を与えると考えられる. [4]展開研究として.経路上の移動負荷を考慮しながら,総巡回路長が短く、同時に迂回率が低いネットワークを構築する手法を提案した.
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