研究課題/領域番号 |
18K13965
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
山下 梓 弘前大学, 男女共同参画推進室, 助教 (60762094)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 性的マイノリティ / LGBT / 防災 / 災害 / 脆弱性 / レジリエンス |
研究実績の概要 |
2020年度までに実施した性的マイノリティ被災者に対するインタビュー調査について,回答の発言テキストをキーワードや文脈に着目して分析した。本研究では,熊本地震,胆振東部地震,北海道東北豪雨の経験者を対象としている。分析に先立ち,性的マイノリティと災害分野の北米の研究者とオンライン研究会を持ち,分析方法や分析結果のまとめ方などについて検討を行った。 分析の結果,ジェンダーアイデンティティや性的指向が異なる性的マイノリティ被災者間に共通する困難な経験と,平時とは異なる災害時の環境や困難な状況を生き延びるための方策が明らかになった。同時に,国内の災害女性学や,性的マイノリティ被災者を対象とした海外の研究に基づいて,性的マイノリティ被災者の災害時の困難経験として研究当初に予想していたがインタビューでは語られていない点についても特定した。 インタビューの分析結果は,性的マイノリティの人々にかかわる東日本大震災以降の防災政策についての考察も含めて英語論文にまとめて投稿した。防災政策に関する考察の参考とするために,日本防災士機構が主催する防災士研修講座を受講し,本研究のための情報収集を行った。(防災士とは,「社会のさまざまなな場で防災力を高める活動が期待され,そのための十分な意識と一定の知識・技能を修得したことを日本防災士機構が認証した人」(日本防災士機構)のこと。)論文は,2022年度に刊行予定の書籍に収録される見通しである。 本研究の成果については,上述の英語論文に加えて,日本災害復興学会,人道支援に関するフィリピンの団体主催のウェビナー,国際協力機構の災害と多様性に関する研修動画教材,市民講座等で公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
防災政策にかかわる国際機関関係者,自治体関係者へのインタビュー調査を予定していたが,新型コロナウイルス感染拡大により予定どおり実施できなかったため。
|
今後の研究の推進方策 |
進捗状況の「遅れ」の理由となっている,防災政策にかかわる国際機関関係者,自治体関係者へのインタビュー調査については,回答者の特定はできていることから,2022年度のできるだけ早期にオンラインで実施する。 また,2022年度が本研究期間の最終年度であることから,関連する国内外の最新の研究について情報収集を行ったうえで,2023年度以降の本研究の発展に向けて研究計画を策定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
差額が生じた理由のひとつは,新型コロナウイルス感染症拡大が続いたことにより,予定していたインタビュー調査の謝礼が執行されなかったことである。また,研究成果をまとめた英語論文の投稿費用を見込んでいたが,編者が出版元と調整した結果オープンアクセス論文として掲載されることとなり,投稿費用が支出されなくなった。 実施できなかったインタビューを2022年度には行う予定であるので,謝礼として執行する。加えて,研究成果を社会に還元するためオンラインでの公開イベント等を企画し,その実施費用としても使用することを計画している。
|