研究課題/領域番号 |
18K13967
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研究機関 | 豊橋技術科学大学 |
研究代表者 |
松岡 常吉 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90633040)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 火災 / 酸素 / 狭流路 / 燃え拡がり / 不安定性 / 熱可塑性樹脂 |
研究実績の概要 |
2枚のプラスチック板の間の狭い空間で燃焼が起こる際,プラスチック表面上を燃え拡がる火炎が非対称となることがある.この現象は近接する火炎同士の干渉により誘起された不安定性により発現したと考えられるが,狭い空間内の現象を観察することが困難で,その発現機構や対称性が破れることで火炎の特性や構造がどのように変化するのかなど詳細は分かっていない.本研究では気体燃料を用いて対称や非対称の燃焼状態を安定的に再現することで,可燃性固体の燃え拡がりで見られた不安定現象のメカニズムの解明を目指す.2018年度の研究で得られた成果を以下に述べる. (1)非対称性の発現に関する上記の考えが正しければ,燃料が固体ではなく気体であっても同様の現象が起こり得るはずである.この仮説を検証するため,狭流路内燃え拡がり装置における固体燃料部を気体燃料供給用バーナーに置き換えた装置を開発し,検証実験を行った.開発した装置は平行平板間を流れる酸化剤に対して,両側の壁面から燃料が直交して流入する風洞となっており,流路幅や燃料濃度,燃料や酸化剤流速の調整が可能である.窒素希釈したメタンを燃料として実験を行い,気体燃料の場合でも対称および非対称な火炎が形成されることを確認するとともに,特定の条件では火炎が振動することを明らかにした.また,火炎の形状や挙動を定量的に評価するための画像解析手法を確立した. (2)対象とする現象が2次元であるとみなし,支配方程式を導出した.パラメータを様々に変えて数値シミュレーションを行い,実験と同様,対称および非対称な火炎が形成されることを確認した.また,一連のシミュレーションから,熱と物質の拡散速度の比であるルイス数が重要なパラメータであることが示唆された.この結果は本研究が対象とする現象とフィンガリング不安定性との類似性を示唆しており,学術的に興味深い.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するには,狭流路内の燃え拡がりで見られた現象を気体燃料で再現するための装置の開発が必要不可欠である.2018年度ははじめに装置の開発を行った.開発した装置を用いて実験を行い,燃料が気体の場合でも対称および非対称な火炎が形成されることが確認できたものの,予備実験を重ねたところ,それまでに得られた結果には装置の温度変動などに起因する不確かさが含まれていることが分かってきた.そこで,2018年度後半は実験の再現性を高めることに重点を置き,装置の温度を制御できるよう水冷機構を追加して改良を行った.これにより従前の装置に比べ精密な実験が可能となり,様々な条件で火炎の形状や挙動を評価するための準備が整った.一方,理論解析と数値シミュレーションについては,気体の燃焼反応を含む熱流体力学の支配方程式の導出は完了し,数値実験による支配パラメータの検討を進めている段階である.以上の状況を総合的に勘案し,現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究により,酸化剤直交流中における対向拡散火炎の形状や挙動を評価するための装置の開発と,理論解析や数値シミュレーションの基礎となる系の支配方程式の導出が完了した.2019年度は,流路幅や酸化剤流速などをパラメータとして様々な条件で実験を行い,画像解析により得られた火炎の形状や挙動に関するデータに基づいて各条件における燃焼状態を整理する.一方,数値シミュレーションによる研究も実験と並行して進めていく.実験に対応した条件で数値シミュレーションを実施し,両者の結果を比較することで前年度に構築したモデルの妥当性を検証するとともに,現象を支配するパラメータについて検討する.さらに,数値シミュレーションと同じモデルに基づいて理論解析を行い,非対称性や振動火炎が発現する遷移臨界条件と火炎の動的挙動に関する詳細な知見を得る.
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