研究課題/領域番号 |
18K13970
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研究機関 | 足利大学 |
研究代表者 |
山下 幸三 足利大学, 工学部, 講師 (20609911)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 雷雲 / 地上静電界 / 雷 |
研究実績の概要 |
本研究は、雷雲内に生成される電荷(以下、雲内電荷)に伴う地上静電界の多点計測により、雷雲内の電荷量・電荷高度の推定を目指すものである。2018年度は、 (1) 静電界計測システムの独自開発・製造、(2) 独自開発した静電界計測システムを用いた試験観測・課題抽出、(3)取得データの初期解析に基づいた雲内の電荷構造モデルの考察を実施した。(1)では、回転型静電界計測器の内部構造を独自設計し、安価でメンテナンスしやすい静電界計測システムとして確立した。計測システムの機械部は企業と連携し、センサー内蔵の電気回路部は申請者が設計・製造した。回路製造では工作機械を新規導入し、観測網構築に必要な複数センサーの特性が均一になる製造体制を構築した。 (2)では足利大学・大前キャンパス、同大学・本城キャンパス、足利大学附属高校の3点に3-7 kmの間隔で静電界計測システムを設置した。8月~9月の試験観測により、連携企業により製造された機械部、申請者が設計・製造した電気回路部に問題がないことを確認した。課題としてはデータ記録システムの安定稼働が挙げられる。データ記録システムとして用いたノートPCは、夏季の高温下で複数回停止した。試験観測後、連携企業と汎用マイコンを用いたデータ記録システムを新規開発し、2019年度夏季の雷雲観測安定化の準備とした。(3)では、雲内の電荷構造モデルを考察した。雷雲内の上層に正、下層に負の電荷領域を持ち、正・負電荷領域に水平方向のずれを考慮した2電荷モデルを考える必要性が示唆される結果を得た。同モデルを想定した雷雲内の電荷量・電荷高度の推定には、センサー7点以上で構成される観測網構築が必要であることを明らかにした。上記の成果を国内学会にて発表し、関連研究者と意見交換を交わすとともに、関連する研究組織・企業との共同研究を推進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
栃木県足利市にて、独自開発した静電界計測システムを用いて地上静電界の多点計測網を構築し、観測を開始した。雷雲に伴う地上静電界変動の計測に成功し、独自開発システムの正常動作を確認した。取得データを元に静電界計測網の設計方針を考察し、センサー設置間隔は5km以下、必要観測点数は7点以上とする指針を得た。システムの安定運用には課題が抽出されたが、汎用マイコンを用いたデータ記録システムを新規開発し、2019年度夏季の雷雲観測の安定性向上の準備とした。以上より、プロジェクトの進捗は概ね順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、観測ネットワーク拡充およびデータ解析法の開発に取り組む。ネットワーク拡充では、足利市内に更に5点の観測点を増設予定である。全ての観測点で2018年度に開発した汎用マイコンを用いたデータ記録システムを適用し、観測網の安定稼働を図る。データ解析では、逆問題解析に基づいた雲内電荷量の推定アルゴリズム開発に着手する。地上静電界の多点計測データを統合・解析し、雲内電荷量の推定に向けた課題抽出に取り組む。
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