研究課題/領域番号 |
18K13972
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
豊田 祐輔 立命館大学, 政策科学部, 准教授 (00706616)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 周辺参加 / 防災ゲーム / 防災訓練 / 防災行動規定因 / 参加意図 / 地域防災 |
研究実績の概要 |
本年度は、防災企画への心理的参加意図規定因とともに、防災競技・ブース内容の整理へ向けた防災ゲームに期待される効果の検証を行った。 まず、これまでの心理学の知見である防災行動規定因について、防災運動会や防災イベントなどの比較的参加しやすい活動への参加意図との関係をWeb調査を通じて明らかにした。まず、回答者の多くが参加希望する地域の防災企画の形態として「防災訓練のみ」、「防災イベントのみ」、「組み合わせ(防災訓練・防災イベント)」、「どれにも参加したくない」の種別に大きく別れることが明らかになった。その上で、これらの種別と防災行動規定因の関係をコレスポンデンス分析より明らかにし規定因を分類した。明確な分類は今後の課題であるが、個人の地震・防災に関わる規定因群や地域(社会)に関わる規定因群では、これらの規定因が高い回答者は「防災訓練のみ」や「組み合わせ」を選好することなどを明らかにしている。 そして、防災競技・ブース内容の整理へ向けて、大学地域連携イベントにおいて、子ども対象の防災ゲームを地域交流イベントで実施し(大阪府北部地震前)、地域の防災訓練と比較した特長を明らかにした。本ゲームに参加した子どもの保護者は30-40歳代が多く、数年に1回程度以上の頻度で地域の防災訓練に参加する層(参加者層)と、ほとんど・全く参加しない層(不参加者層)に別れることが明らかになった。特に不参加者層については、地域の防災訓練への参加意図はあるものの参加はしていない保護者もおり、主催者側として彼らにアプローチできた。さらに参加者層・不参加者層ともに地域の防災訓練よりも防災ゲームへの参加意図が強いことを明らかにした。以上より、地域コミュニティで防災ゲーム等を実施することで、子どもや保護者への防災啓発だけでなく、主催者と参加者のつながり醸成や地域の防災訓練への参加誘導のきっかけとなりえることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
防災企画への心理的参加意図規定因の分析とともに、防災競技・ブース内容の整理へ向けた防災ゲームに期待される効果を示すなど、本研究完遂へ向けた初年度として概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
まず選好する防災企画と防災行動規定因の関係(組み合わせ)について詳細で精緻な分析を行い、防災企画参加規定因としてまとめる。以上より、「防災訓練のみ」、「防災イベントのみ」、「組み合わせ(防災訓練・防災イベント)」、「どれにも参加したくない」を選好する住民について、異なる規定因へアプローチすることが必要であることを示す。さらに、大学地域交流イベントにおいて、防災ゲームを本年度も実施し、地域防災訓練ならびに防災ゲームを含む地域防災イベントへの参加意図の詳細を明らかにする。特に昨年度においては、地域の防災訓練への参加を阻害する要因を明らかにすることができなかったため、具体的にどのような阻害要因があり、地域イベントでの防災ゲームがどのように阻害要因を克服することができるのかを示す。以上より、防災企画の効果について、短期的防災教育に加えて、今後の防災企画への住民参加につながる方策の提言を行う。 さらに包括的地域防災力の評価へ向けた評価軸について検討する。本課題には、「コミュニティ・レジリエンス」の概念を応用し、これまでの住民活動に積極的に参加する住民(自主防災組織など)のみではなく、普段は防災訓練に参加しない住民の潜在的なレジリエンスの理論的フレームワークの構築を行う。本フレームワークに防災企画への住民参加促進方策を当てはめることで、防災イベントなどを含む防災企画の理論的防災効果を示す。 なお、2018年6月に大阪府北部地震が発生し、研究対象となっている地域にも被害を及ぼした。地震経験による防災意識は長期間持続しないことは既存研究で指摘されてはいるが、防災企画への住民参加については特に防災意識が影響を与えることから、地震経験による効果には注意を払った上で調査研究を進めていく必要があることが本研究における不可抗力に関連する大きな課題である。
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