総合的な防災・減災の実現には、都市の詳細な描像に基づいて地震・津波等の災害、経済への影響などを検討する幅の広い学際的な協力が必要である。一方で、都市のデータは増え続け、計算技術の進展も早い。各分野の専門家が個別に開発する異種のプログラム群や関連する異種のデータ群を、柔軟に追加・取り替え可能な疎結合の状態で連携させる方法論が不可欠である。 この方法論の一つが「記述形式の標準化」であり、すべてのデータを標準化された汎用的な形式で記述することで、標準に対応したプログラム間のデータ連携を可能とする。しかし、この方法論は、目的に適合した記述形式を設計して利用することを阻害するため、特に高性能計算を利用する総合防災には不十分である。そこで、本研究では、一律的な形式でデータを記述する標準化に替わり、記述形式の自動変換に基づくデータの抽象化というより包括的な方法論に基づいて、異種データ・異種プログラム群を柔軟に連携させる技術を開発した。
2018年度までに、データの記述形式をデータの意味に基づいて自動変換することによって、通常はデータの記述形式によって制限されるプログラムの適用範囲を拡大させ、プログラムの再利用性を向上させるデータ処理プラットフォーム(DPP)を開発し、地震・津波シミュレーションに実践していた。しかし、DPPで取り扱うデータの種類は、データの定義を手作業で登録していたために10のオーダに留まっていた。そこで、本研究では、XMLスキーマ言語などで記述されたデータ定義がDPPに自動で取り込める機能強化を実施し、XMLスキーマ言語などで定義された100~1000のオーダの種類のデータへの対応を可能とした。
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