持続発展可能な社会の構築に向けて、エネルギー利用効率化を推進する高機能軽金属材料の開発は重要な課題である。軽金属材料では微量添加元素による微視的組織制御が不可欠であり、近年では計算科学・データ科学を用いた材料設計が注目されている。こういった設計アプローチは既存の理論・データの範疇での特性最適化・プロセス開発効率化に対しては有効に働くと考えられるが、革新的な高機能材料開発に向けては材料特性に影響する新規な微細組織因子の発見が重要である。 本研究では、アルミニウム合金の機械的特性を主な対象として、原子~ミクロスケールにかけて取得可能な多次元組織データに対して理論予測・機械学習アプローチを用いて、材料特性に寄与する組織データを抽出するとともに、抽出データをデータ同化手法により材料組織学の理論に還元し、高機能材料設計の指針となる新規微細組織因子を見出すことを目的とする。 今年度は機械的特性を制御した種々のアルミニウム合金に対して組織データを取得するとともに、機械的特性に影響する微細組織因子の抽出を行った。1000系(工業的純アルミ)および8000系(Fe過剰添加Al合金)合金についての調査結果より、工業的に不可避な不純物元素であるFeおよびSi元素が機械的特性の変化に強く寄与していることを確認した。取得した多次元組織データを用いてAl合金の硬さ変化を説明するモデルを構築し、抽出した微細組織因子の妥当性を検討した。
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