研究課題/領域番号 |
18K13986
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
岡田 周祐 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (90712480)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | Sm-Fe-N / 還元拡散法 / 溶融塩 / 磁石 / 希土類 |
研究実績の概要 |
目的とする希土類-鉄合金粒子の形状制御のためには、「異方性形状粒子を形成可能とするための合成温度の低温化」と「低温化での粒子生成時の成長制御」の2つが大きな課題となる。今年度は特に「合成温度(還元拡散温度)の低温化」について検討を行った。 還元拡散法は鉄粉末、希土類金属酸化物粉末、カルシウムをアルゴンガス雰囲気下で加熱することで、希土類酸化物をカルシウムで還元しつつ、還元された希土類が鉄粒子に拡散することで、希土類-鉄合金粒子が生成する。通常、還元拡散を行うためにはカルシウム融点(850℃)以上まで加熱する必要がある。このような高温で還元拡散を行った場合、針状の鉄粒子を用いても、高温での合金化と粒成長の過程で球状粒子化してしまう。そのため、還元拡散法のこれまでにない低温化が必要である。 本研究では還元拡散温度を低温化するため、溶融塩を用いることを考えた。従来法がカルシウムが融体となって、反応系中に溶け広がることに変え、溶融塩をいわばカルシウムの溶媒として用いることを考えたものである。 溶融塩を用い、還元拡散の低温化を検討した結果、溶融塩を用いることで500℃程度まで低温化しても希土類-鉄合金が生成することを確認することができた。さらには、従来ではSm-Feの場合はTh2Zn17型Sm-Fe合金相しか生成しないのに対し、低温化した結果、準安定相であるTbCu7型Sm-Fe合金相が生成することも新たに発見するに至っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
溶融塩を用いることで、希土類-鉄合金粉末の合成温度(還元拡散温度)を従来カルシウムの融点850℃以上であったところを、500℃程度まで低温化することに成功した。これにより、従来法では「合成温度が高温すぎて粒子形状の制御が困難」という一つ目の大きな課題をクリアできる見込みを立てることができた。 さらには合成温度を600℃程度まで低温化した結果、準安定相であるTbCu7型のSm-Fe合金粉末が得られることを新たに発見した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は溶融塩中での形状制御された希土類ー鉄合金粒子の実現が課題となる。そのための方策としては、「形状制御された鉄粒子を前駆体として用いる」と「反応系中で直接、希土類-鉄合金粉末を生成させる」の2つルートがある。それぞれの合成ルートを検討していくことで、低温化での合金粒子生成メカニズムを理解しつつ、反応条件の改良・革新を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
端数が生じたため。
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