研究課題
本研究は、P型Cd-Mg-Yb正二十面体準結晶中に見出されたF型超構造の短距離秩序に関して、超構造秩序の長距離秩序を実現し、その原子的構造を明らかにすることを目的とする。具体的な研究内容は、Tsai型正二十面体クラスタからなるF型正二十面体準結晶の6次元周期構造の数理モデルの構築、F型Cd-Mg-Yb正二十面体準結晶の作成および単結晶育成、そして単結晶X線回折強度データを用いた原子的構造の構造精密化による構造解析である。これまで、6次元周期構造における3次元占有領域を作成するためのプログラムの開発に着手し、Python3で使用可能なライブラリ(PyQcstrc)として完成させた。また、F型超構造中のTsai型正二十面体クラスタのシェル構造を明らかにすることを目的として、比較的構造が単純な1/1近似結晶Cd-Mg-希土類のF型超構造についてX線構造解析を行い、F型超構造の形成には二十・十二面体上の48hサイトにおけるMg占有率が関与していることを明らかにした。Cd-Mg-Yb正二十面体準結晶中のF型超構造も同様に二十・十二面体上のMg占有が関与していると考えられることから、本年度は、PyQcstrcを活用して準結晶中の二十・十二面体のサイトについて、b結合、c結合、それ以外の3種類に分類し、それぞれに対応する占有領域を求めた。さらに、原子占有を適切に扱うことができるよう、クラスタ最外殻をなす菱形三十面体を構成する3回軸頂点サイト(R3)と5回軸頂点サイト (R5)をクラスタ局所環境に基づいて11種類のサイトクラスに分類し各クラスに対応する占有領域を決定した。そして、このサイトクラスを用いて、クラスタ内殻の十二面体、二十面体のサイト分類を行い、ともに8種類のサイトクラス分類し対応する占有領域を決定した。
2: おおむね順調に進展している
1/1近似結晶Cd-Mg-希土類のF型超構造の構造を明らかにすることで、Cd-Mg-Yb準結晶におけるF型超構造の起源となり得る原子サイトを特定でき、このサイトに対応する占有領域を特定することができた。
引き続きF型超構造をとる試料作成に取り組む。また、F型超構造が実現できない場合を想定し、すでに観測しているX線散漫散乱強度の解析に取り組み、F型超構造の短距離秩序を原子レベルで明らかにする。
参加を予定していた学会の延期による
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件)
Journal of Applied Crystallography
巻: 54 ページ: 1252~1255
10.1107/S1600576721005951
Acta Crystallographica Section B Structural Science, Crystal Engineering and Materials
巻: 77 ページ: 638~648
10.1107/S2052520621006715