情報化社会の発展に伴って、青色あるいは紫外の半導体レーザー用の光制御素子の需要が増大している。光制御素子へ応用可能な磁気光学材料の創製を目指し、3d遷移金属元素を含むガラスを対象に、遷移金属元素の種類、濃度あるいは母ガラス組成が磁気光学特性、特にファラデー効果に与える影響を調査した。無容器浮遊法を用いて、3d遷移金属酸化物(Sc2O3、TiO2、V2O5、Cr2O3、MnO、FeO、CoO、NiO、CuO、ZnO)を1-5 mol%含むガラスを作製した。単位磁場、単位厚さあたりのファラデー回転角であるベルデ定数は、Sc2O3、TiO2、V2O5、MnO、FeO、CoO含有ガラスでは負の値を、Cr2O3、NiO、CuO、ZnO含有ガラスでは正の値を取った。3d遷移金属酸化物を含むガラスの中では、FeO含有ガラスが最も大きなベルデ定数の絶対値を示した。単位質量あたりの磁化率は、FeO含有ガラスで最大となった。FeO濃度を1、2.5、5、10 mol%と増加させると、比例してベルデ定数の絶対値も増加した。また、母ガラス組成を変化させることで、ベルデ定数の値が変化することが分かった。同じ濃度のFeOを含むケイ酸塩ガラスとホウ酸塩ガラスを比較すると、ホウ酸塩ガラスの方がベルデ定数が大きかった。カルシウムケイ酸塩ガラスとストロンチウムケイ酸塩ガラスでは、カルシウムケイ酸塩ガラスの方がベルデ定数は大きかった。ベルデ定数の変化の理由を考察するため、Van Vleck-Hebbの式を用いて解析を行った。有効遷移確率の変化がベルデ定数の値の変化に寄与していることが分かった。母ガラス組成によってベルデ定数が変化することについてより理解が進めば、磁気光学材料の自在な設計が可能になると考えられる。
|