令和2年度はCa2GeO4:Crに加えてSr2GeO4:CrおよびBa2GeO4:Cr蛍光体の合成法を確立し、それらの発光特性を比較した。合成条件を最適化することで、いずれの試料でも単相の試料を得られた。発光スペクトル測定の結果、いすれの試料も1300 nm付近にピークを持つブロードなスペクトルを有していること、および、Sr2GeO4:CrやBa2GeO4:Crと比較してCa2GeO4:Crは発光強度が10倍以上強いすることが明らかになった。各試料の拡散反射スペクトルを比較したところ、いずれの試料でもクロムイオンの3d軌道内電子遷移に起因した光吸収帯が観察できたが、Ca2GeO4:Crのみ結晶場分裂による構造がより顕著に表れることが明らかになった。この結果より、発光波長のみならず発光強度を制御するための材料設計指針も得ることができた。 また、本研究課題全体(平成30~令和2年度)を通じて研究を進めた結果、以下の主な成果が得られた。 (1)Cr3+を添加する母体結晶として、ZnやAlなどと比較して、Mgサイトを持つものを選択することで広帯域、かつ、高い発光強度を持つ近赤外広帯域蛍光体を得られることが分かった。 (2)Cr4+を添加する母体結晶として、4配位のSiまたはGeサイトを持つものを選択することで、Cr3+イオンを発光中心とした蛍光体では得られなかった、より長波長領域での発光を得られることが分かった。 (3)Siサイトより、Geサイトを持つ母体結晶の方がCr4+がより長波長領域で発光することが分かった。さらに、Geサイトを持つ母体結晶同士でも、Cr4+に対する結晶場による影響が異なり、それが蛍光体の発光強度に影響を与得ることも明らかになった。
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