全固体リチウム電池において、急速充放電の実現、延いては電池性能の劣化防止のためには、界面抵抗の低減が不可欠である。負極側は、グラファイトを用いた場合、界面抵抗が1桁低い10 Ω程度であるため、被覆による界面抵抗の低減は殆ど検討されておらず、計算もされていなかった。これまでに第一原理計算を用いてLiC6とβ-Li3PS4の界面について検討し、正極で報告されているような界面付近でのリチウムイオン分布の乱れは見られなかったことを明らかにした。一方、別の研究グループは、黒鉛の表面にナノサイズのLiAlO2を均一分散させた試料を作製し、良好なリチウムイオン二次電池(電解液使用)の特性(レート特性、初期クーロン効率、サイクル安定性)が得られたと報告していた。全固体リチウム電池においても同様に性能向上が期待されるが、そのような検討はされていない。そこで、今年度はソルボサーマル法により黒鉛にLiAlO2を被覆し、全固体リチウム電池の電池特性が向上されるか否かについて調査を行い、電池性能の向上の要因について考察を行った。 その結果、被覆量が増加するにつれて、体積抵抗率が高くなり、レート特性は被覆無しよりも低くなった。一方、初期クーロン効率は、0.125 mol%LiAlO2被覆した試料において、被覆無しよりも高くなった。またサイクル安定性は、0.125、0.5 mol%LiAlO2被覆した試料において、被覆無しよりも向上した。一粒子硬さ試験より、被覆により圧壊強度が増加し、標準偏差が小さくなったことが分かった。被覆することにより、圧壊強度の標準偏差が小さくなっていることから、電池成形時に生じる一軸圧縮に対して、(002)面に水平に大きく変形する粒子が少なくなることが予想される。電極合材にて大きく変形した黒鉛が少なくなることから、一様な電気化学反応が起こり、電池特性が向上したと考えられた。
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