研究課題/領域番号 |
18K14003
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
越智 里香 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 助教 (80709618)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 金属-有機構造体 / ドラッグデリバリー / 生体分子 / 糖脂質 / ペプチド / 軽金属カチオン / 配位高分子 |
研究実績の概要 |
金属-有機構造体(MOF)は金属イオンと有機配位子の自己組織化により構築される多孔性結晶であり、骨格構造および細孔界面環境の設計性の高さからガス吸着材や触媒などとして盛んに研究されている。さらに近年では、ドラックデリバリーシステムにおける薬剤担持体としても注目されている。しかしながら、MOFの多くは構成成分として毒性が懸念される重金属イオンが用いられていること、概して水中安定性が悪いこと、というバイオ応用を目指すうえで克服すべき課題があった。そこで本研究では、低毒性が期待できる軽金属カチオンと生体分子(糖、ペプチド、脂肪酸)からなる有機配位子を用いることで生体親和性と水中安定性を兼ね備えた軽金属MOFを構築し、外部刺激(酵素)応答性の薬剤放出を示すアクティブな薬剤担持体としてのバイオ応用を目指す。本研究では、HSAB則上で軽金属カチオンと相性が良くかつ多価効果が期待できることから、金属配位部位として糖の利用を試みている。 本年度は、糖脂質型有機配位子ライブラリの合成ルートの確立、糖ペプチド型有機配位子の合成検討、軽金属MOFの合成検討をおこなった。現時点では軽金属MOFの構築には至っていない。しかしながら、軽金属塩が糖脂質型有機配位子の自己集合特性に影響を及ぼすという、軽金属MOFの構築をおこなううえで有用な知見を得ている。以上の研究成果ならびに関連研究に関する成果を第67回高分子討論会、2018年日本化学会中国四国支部大会、日本化学会第99春季年会などで発表した。 来年度はこれまでに得た知見をもとに、軽金属MOFの構築ならびに薬剤担持体としての機能評価を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者は前年度(2017年)に高知大学に異動した。本年度は研究室の立ち上げ(実験環境の整備)に時間を要したため進捗状況にやや遅れが生じた。これまでに研究室の整備はほぼ完了しているので、来年度はスムーズに実験をおこなうことか可能であり遅れは十分取り戻せると考えている。 本年度は糖脂質型有機配位子の合成ルートの確立、糖ペプチド型有機配位子の合成検討ならびに軽金属MOFの合成検討をおこない以下の結果を得ている。 1)糖脂質型有機配位子ライブラリの合成ルートを確立した。糖ペプチド型有機配位子については合成ルートを検討中である。 2)合成した糖脂質型有機配位子ライブラリと軽金属塩を用いることで軽金属MOFの合成検討をおこなった。現時点ではMOFの構築は確認できていない。 3)糖脂質型有機配位子が示す自己集合特性ならびに軽金属塩が自己集合特性に与える影響を明らかにした。 上記の研究成果について、第67回高分子討論会、2018年日本化学会中国四国支部大会、日本化学会第99春季年会などで発表した。次年度はこれまでに得ている知見をもとに、軽金属MOFの構築ならびに薬剤担持体としての機能評価を進める。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はこれまでに確立した合成ルートにしたがって糖脂質型有機配位子ライブラリの構造拡張をおこなう。加えて、糖ペプチド型有機配位子の合成ルートの確立をおこなう。 合成した糖脂質型・糖ペプチド型有機配位子と種々の軽金属塩の組み合わせおよび反応条件を検討することで軽金属MOF候補となる結晶を合成する。特に、糖残基の立体異性と自己集合能・金属配位能との相関を精査し、有機配位子および軽金属MOFの合理的分子設計指針の探索を目指す。得られた軽金属MOF候補について単結晶X線構造解析を行い、詳細な結晶構造を決定する。単結晶が得られにくい錯体に関しては、粉末X線回折、NMR測定の結果より結晶構造を推定する。 構造同定した軽金属MOFについては水中安定性を評価する。さらに、薬剤モデル分子をMOF細孔内に導入し薬剤担持能を評価する。 現在までの進捗状況の箇所で記載したように研究環境が整い、かつ基礎的知見が得られていることから、次年度はよりスムーズに研究が展開できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた備品・試薬等の一部を高知大学を退職(他大学へ異動)した教員に譲渡していただいたため購入の必要がなくなったこと、当初支出を予定していた共通機器使用料の一部を他予算(学内プロジェクト経費)により賄うことができたことから差額が生じた。 差額については、今後研究が進むにつれて必要となる器具・試薬類の購入、出張費、論文投稿費、共通機器使用料として活用する。
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