本年度は酸化物/窒化物ナノ複合体の出力因子を向上させるため、TiNの体積分率の低下によるゼーベック係数の減少の抑制、および母相SrTiO3(STO)のLaドープによる導電率の向上を図り、熱電材料としての可能性について検討した。 XRDパターンから、作製したLaドープSTO(LSTO) および各LSTO/TiN 焼結体試料はLSTOとTiN だけを含むこと、滴下したTBOT量が増えるとTiNは増加したことが分かった。また、XRDピークの半値幅から、TBOT 30 mmol試料における LSTO の結晶子径は約50 nmと見積もられた。これは、SEM像で見られるLSTOの粒子が100~200 nmで小さいことと一致する。一方、TiNが少ないTBOT6.5 mmol試料では、LSTOの粒径は増大していた。これらの結果は、TiNがLSTOの粒成長を抑制したことを示す。TBOT30 mmol試料の格子熱伝導率はTBOT6.5 mmol試料に比べて全温度域で低下していたことから、LSTOの結晶粒径の減少が格子熱伝導率の低減をもたらしたと考えられる。各試料の出力因子の温度依存性から、TBOT6.5 mmol試料ではLSTO単相と比べて室温で3桁以上、770℃でも約1.5桁向上した。これは導電率を大幅に増大させつつ、ゼーベック係数の減少を抑制できたことによる。TBOT30 mmol試料の出力因子は、ゼーベック係数の減少が大きかったため、TBOT6.5 mmol試料 に比べ低かった。結果としてTBOT6.5 mmol試料の熱電性能が最も高く、775℃で0.14を示した。TiNの体積分率が低い条件でLSTOの結晶粒径を抑制できれば、更なる熱電性能の向上が期待される。
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