研究実績の概要 |
液体の輸送技術は、工業分野だけでなく医療・エレクトロニクス分野に不可欠な基盤技術で あるが、液体が付着残りが輸送効率を低下させてしまう問題であった。本研究では、液体の付着を抑制する一方でその輸送挙動を制限するという一見相反する特性の両立に向けて、撥水性の異なるパターン表面と水滴界面でおこるピン留め挙動を解明し、その知見に基づき付着損失のない液体輸送技術を開発することを目的とした。申請者は2018-2020年度の研究で液体の付着メカニズムの解析から始め、同じ接触角の表面でも撥水性分子の流動性によってその動的な濡れ性が異なることを見出した。そして撥水性分子鎖のAdaptivityを変化させたパターニング表面による重力駆動の非付着液体輸送表面を開発した。更に、この撥水性コーティングを磁気・光応答性ナノ材料に施し「液滴表面」でパターニングすることで、液体を付着損失なく、任意の方向に輸送・放出する遠隔操作技術を開発するまでに至った。本研究を総括すると、当初の目的であった、液滴を付着させずに輸送する表面の開発を達成し、さらにそれを上回る成果として任意方向に液滴を付着させることなく輸送できる技術の開発まで達成したことから十分に本研究課題を達成したと考える。この液滴の任意輸送技術に関する研究は、John Wiley & SonsのAdvanced Functional Materials誌(IF:16.836)に掲載され、Hot topic in robotics, Inside front cover, Advanced science newsで取り上げられた。さらに2020年度の目標であった液滴の輸送メカニズムの解明に関してはAdvanced Materials Interfacesに掲載され、Front coverに選ばれた。
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