本研究では,高強度グリーンコンポジットの創製に必要な繊維の加熱処理に関する知見が必要である.複合材料では,強化材である繊維の強度特性が重要である.グリーンコンポジットの強化材である植物繊維の主な構成材料には,高強度・高弾性を有するセルロースミクロフィブリルがある.また,植物繊維の構造は,一次壁や二次壁,ルーメンがあり,二次壁にセルロースミクロフィブリルが多く存在することが知られている.そのため,繊維表層に加熱処理を施すことで,高強度の天然繊維を創製できる可能性があるため,その機械的特性について調べた. 本研究では,マルチフィラメントの構造のジュート麻繊維,シングルフィラメントの構造の亜麻繊維および苧麻繊維を使用した.所定の加熱処理を施したジュート麻繊維,亜麻繊維および苧麻繊維の静的引張試験および密度測定を行った.走査型電子顕微鏡により,加熱処理後のジュート麻繊維の表面観察も行った.それらの結果,以下のことがわかった. 所定の温度で加熱処理を施した苧麻繊維のヤング率の減少率は,最も値が低かった.また,加熱処理後のジュート繊維のヤング率の減少率は亜麻繊維および苧麻繊維の場合とくらべ大きく低下した.所定の加熱処理を施したジュート麻繊維では,繊維表面が粗く,素繊維細胞の形状もみられた.以上のことから,加熱による繊維損傷が生じにくい苧麻繊維を用いることで,高強度グリーンコンポジットを創製できることが示唆できた.
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