研究課題/領域番号 |
18K14009
|
研究機関 | 帝京科学大学 |
研究代表者 |
山際 清史 帝京科学大学, 生命環境学部, 講師 (20711443)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | カーボンナノ材料 / カーボンアロイ / 電極触媒 |
研究実績の概要 |
本研究では,窒素・ホウ素含有カーボン複合材料を液相中において簡易合成し,メタルフリーを念頭に置き,燃料電池やバイオセンサの電極材料としての適用を試みることを目的としている.カーボンペーパーをはじめとする炭素繊維構造体を基材として用い,その繊維表面にカーボンナノファイバーやカーボンナノウォールといったナノマテリアルを独自の液相通電加熱プロセス(液相一段合成法)によって直接成長させ,3次元的に高比表面積を有し,触媒の担持に適したマイクロおよびナノカーボン複合体を創製する. 平成30年度は液相一段合成法を活用し,天然由来のタンパク質を添加物として溶液に溶解することで,カーボンペーパー基板に直接カーボンアロイの合成を試みた(窒素やホウ素などが微量にドープされた炭素化物は特に“カーボンアロイ”と呼ばれ,例えば脱白金化が望まれている固体高分子形燃料電池の新しい電極触媒としても期待されている).タンパク質を溶液に添加して合成実験を行ったところ,カーボンペーパーの繊維表面に特徴的な形態を有するカーボンナノファイバー(CNF)の形成が確認された.CNFは直径が数百ナノメートル~1マイクロメートルでありアスペクト(縦横)比は小さく,また表面にはひだ状のナノ構造を有した.生成機構は考察を進めているが,天然由来のタンパク質にごく微量に含まれる遷移金属(蛍光X線分析により存在を確認)が触媒として機能し,タンパク質の炭素を炭素源として成長したと推測される.現在,電極として使用した場合の電気化学的特性についての評価の検討を進めている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
天然由来のタンパク質を溶液に添加した液相系においてカーボンペーパー(CP)の繊維表面に特徴的な形態を有するカーボンナノファイバー(CNF)の合成に成功し,さらに合成したCNF/CPを作用極に用いた電気化学測定(サイクリックボルタンメトリー,電解液:フェリシアン化カリウム水溶液)により,電極材料として良好な特性を示すことがわかっている.また生成物のキャラクタリゼーションも順調に進んでおり、例えば,X線光電子分光法(XPS)による表面分析から,生成物の表面には窒素の存在が確認され,カーボンアロイであることが示唆されている.
|
今後の研究の推進方策 |
カーボンナノ材料の液相一段合成法は,(i) 炭素源,(ii) 基材,(iii) 触媒前駆体,(iv) 添加剤の選択と組み合わせの多様性が,既存の気相合成法に比べ高い.現在は特に,複数の元素を含み,優れた機能性を有するナノカーボンコンポジットの創製を進めている.本研究では,ワンステップでの機能性付与として,特に添加剤効果についてこれまでの経験値を活かす予定である.例えば,微量の賦活剤を溶液に添加することで,ナノカーボンの合成と同時に賦活による生成物への影響を検討する.ナノカーボンの表面状態,特に細孔の形成は,電気化学的な表面積を向上させるだけでなく,担持する触媒の活性や長期安定性などに多大な影響を与える.カーボンナノ材料の成長自体に与える影響も考慮しつつ,生成物の表面積や電極性能を系統的に比較し,最適化を進める予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験試薬や基板材料等の消耗品の消費量が,当初の想定と比較して多少少量であったため,その分の差額が生じた. 平成31年度分として請求した助成金と合わせ,実験試薬等の消耗品および機器・備品の購入を計画している.
|