本研究では,メタルフリーを念頭に置き,カーボン複合材料を液相抵抗加熱プロセス(液相一段合成法)によって合成し,燃料電池やバイオセンサ等の電極材料としての適用を試みることを目的としている.具体的には,例えばカーボンペーパーなどの炭素繊維基材を用い,適切な添加剤を加えた炭素源のアルコール中で電気抵抗加熱することで,その繊維表面にナノカーボンを直接生成させ,3次元的に高比表面積を有するカーボン複合材料を創製する.また,対照実験として,液相プロセスおよび化学気相成長(CVD)法により種々の繊維基材表面にナノカーボンの合成を検討し,炭素繊維基材系との比較とナノカーボンの生成機構の考察を行う. 令和3年度は,液相一段合成法によってカーボンペーパーの表面にウォール状のカーボン構造体を構築し,特に無機系ナノ粒子や,水酸化カリウムなどのアルカリを溶液に添加することで,表面形態に与える効果を検討し,また基材ごと電極として用いた場合の特にバイオアノード(グルコース酸化系,メディエータ利用型)としての特性を評価した.実験の結果,ウォール状の構造体が酵素型のグルコース酸化反応の起点として効果的に機能することが示された.CVD法による対照実験では,カーボンペーパーの表面にウォール状構造は見られず,液相一段合成法による特有の形態であることが示唆された.一方で,炭素繊維系以外の基材では,液相一段合成法とCVD法で類似のナノカーボンが生成する系もあり,興味深い比較結果と知見を多く得ている.成果および得られた知見は,学会発表や展示会への出展,また学術論文の発表へとつなげている.
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