2019年度は、HIPにより試作したMgB2バルクを実際に作製し、2018年度において解析手法として導入をはじめたFIB-SEMを用いたマクロスケール三次元組織解析を適用することで、目的であるバルク組織制御を試みた。その結果得られた知見を以下に示す。 1.In-situ法としてMgとBの混合粉末を一軸プレスで成型、HIPを行うと初期にMgが存在した領域がポアとして残り、うまく圧力が印加されず密度が上がらないことがわかった。一方で、予備加熱によりMgB2をある程度形成させてHIPを行った場合は、予備加熱の段階で組織がある程度固まってしまうため、緻密化の効果もほとんど得られないこともわかった。これらの知見から、MgB2をHIPで高密度化を試みるためには周囲をシース材で囲んだのちに圧力を印加することで、Mgの反応により生成したポアをMgB2が形成する前になくすことが必要であることが見出された。また、添加したMg2Cu粉末はいずれの試料でもほとんど残存しておらず、Cu添加は問題なくできていることも示唆された。 2.FIB-SEMを用いた三次元観察では、Mg由来の粗大なポアの周囲に酸素が濃化した領域があることがわかり、これはHIP中に本領域にガスが入り込んでいることが示唆された。一方で、HIP前にB粉末であった領域はマクロには均一なMgB2が形成しており存在するポアのほとんどが閉じたポアであることがわかった。さらに本手法はポアの形態や表面積などの情報も得られることから今後の超伝導バルク体における解析手法として有用であることが示唆された。
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