一般的に、降伏応力の向上には、集合組織の制御および結晶粒微細化が有効である。大気中においては微細化による疲労特性の向上が認められたものの、in vitro疲労特性の改善が認められなかった。 微細結晶粒材について、破面観察および電気化学試験、分解生成物層の詳細な解析を行った。分解生成物層のEDS結果から、同様の分解生成物層が形成されていることが推察された。電気化学試験の結果、破壊電位は粒径に依存して変化することが明らかになった。以上の結果から、き裂の発生起点となる局所分解が微細化により生じ、高サイクル領域でのin vitro疲労寿命が低下したものと考えられる。 以上のように、高強度化に寄与する結晶粒微細化がin vitro疲労特性の解明に繋がらなかった一方で、{10-12}双晶の導入にともない自然電位は変形の増加にともない改善する傾向が認められたことから、微細組織制御によりin vitro疲労特性は改善可能であると考えられる。 また、結晶粒界に対する仕事関数に対する第一原理計算の実施が難しかったことから、材料のプロセス条件を変更し、異なる集合組織を有するMg-Zn合金の疲労特性を評価したところ、in vitro疲労試験中に生じるき裂の位置が特定の加工面に集中するなど、in vitro疲労特性に対して、集合組織は大きく寄与することが明らかとなった。したがって、材料の加工プロセス改善によりin vitro疲労特性が改善可能であることが期待できる。
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