研究期間最終年度では、p型材料とn型材料使用したフレキシブル熱電発電モジュールを構築を中心に行った。 興味深いことに、イオン性界面活性剤の電荷によってCNTフィルムの半導体特性を制御できることに成功した。具体的には、CNT独立フィルムを調製する際、分散剤にアニオン性界面活性剤を使用したとき、CNTのキャリアはホールであるのに対して、カチオン性界面活性剤を使用したとき、CNTのキャリアは電子になることを明らかにした。なお多種多様な界面活性剤を使用しても、界面活性剤のアルキル鎖長に関係なく、この挙動は明らかであった。また、界面活性剤を使用して調製された最適なp型材料とn型材料使用して簡易的なモジュールを作製し出力電力を確かめたところ、典型的なモジュールを構造であるのにもかかわらず、容易にマイクロワットオーダーの電力を得ることが可能であった。この成果は、完全な水系溶媒から調製された有機熱電モジュールで初めてマイクロワットオーバーの出力が実証された初めての例である。 そこで、各々のさらなる最適化を行った。p型では、良好なCNT分散剤であるシクロデキストリンポリマー使用して簡易的な熱処理を行うと、本来の電気伝導性が得られるため、500 μW/m-1K-2以上のPF値を記録した。またn型では、界面活性剤分子の構造を最適化することで、PF値が300 μW/m-1K-2以上のCNTフィルム得ることができた。このフィルムは加速度劣化試験80℃においても良好な熱電特性を維持でき、安定性を有していた。今後はこれらの材料を使用して、フレキシブル熱電発電モジュールの構築と構造のコンパクト化を検討する予定である。なお本課題では今年度1報(オープンアクセス)の論文発表にとどまっているが、これらの成果は既に2つの査読付き英論文まとめられており、それぞれを投稿中である。以上、本課題では良好な成果が得られた。
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