研究課題/領域番号 |
18K14020
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
西村 崇 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主任研究員 (20372138)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 電解 / 触媒 / 金属空気二次電池 / 正極 |
研究実績の概要 |
本研究では、電解法を応用することで、アルカリ水溶液中で酸素発生および酸素還元活性が高いランタン系ペロブスカイト型金属酸化物を作製する。さらに、導電助剤であるカーボン粉を触媒形成時に同時に固定させることで内部抵抗が低く利用率の高い触媒層を実現する。触媒活性の目標として、初期電位が-0.3 V (vs.Hg/HgO)以上、100サイクル充放電を繰り返した後の電位が-0.35 V(vs. Hg/HgO)とする(ハーフセルで実験を行い、充放電電流は5 mA/cm2とする)。 初年度に、LaMn酸化物、LaMnSr酸化物、LaMnCa酸化物について組成制御およびカーボン粉の同時固定に成功した。さらに、析出した酸化物の組成は主に電解液組成に大きく依存することも明らかにした。それらの結果をもとに、本年度は、目的の組成の酸化物/カーボン粉触媒を作製して酸素還元および酸素発生反応の活性を測定し、カーボン粉との共析の効果と酸化物の組成と活性の関係を調査した。その結果、酸素還元反応はカーボン粉と同時析出させることにより活性が大きく向上することが分かった。一方、酸素発生反応は、カーボン粉との共存による効果よりSrやCaの添加による効果が大きいことが分かった。XPSによりMnの電子状態を確認すると、組成により価数が若干異なり、この違いが酸素発生活性に影響を及ぼしていると考えられる。 現在、初期特性の目標値は達成しているか、充放電を繰り返した後の活性について目標に達していない。最終年度では、LaCo系酸化物においても組成制御およびカーボン粉の同時固定を行い、触媒の電気化学特性および電池特性を調査する。この結果をもとに、最も高活性な組成の触媒を提案する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LaMn系およびLaCo系の2種類の酸化物の析出を予定しており、LaMn系においては析出条件を確立し、カーボン粉との共析にも成功した。さらに、目標値として挙げている初期電位も達成した。現段階では、LaCo系の析出条件の確立および充放電を100サイクル繰り返した後の電位については未達である。 LaCo系においては、LaMn系で確立した条件をもとに予備実験を行い、傾向をつかんでいるため、条件確立は短時間で可能であると考える。また、100サイクル後の目標値も、LaCo系の作製および触媒の析出量の改善を行うことで達成可能であると考える。そのため、全体としてはおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
目標を達成するために、次の2つの検討を行う。一つ目は、LaCo系で同様の析出を行い組成制御することにより高活性触媒を得る。LaCo系においてもLaMn系と同様の実験を行い、組成制御可能であることが判明しているため、再現性の確認を行い条件の確立を進める。二つ目は、析出を複数回繰り返し、析出量を増やすことで耐久性を向上させる。現在、触媒層の厚みは数μm程度で非常に触媒量が少ないため、長時間の使用には耐えることができない。そのため、数十~数百μm程度の厚みにして触媒量を増加し特性の改善を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
3月に参加予定していた3件の学会等がコロナウイルスの影響で現地での開催が中止となり、当初予定していたものと差額が生じたため。また、消耗品購入の際の差額が生じたため未使用額が生じた。 次年度も、助成金は薬品や電極などの消耗品と各種学会の参加費に当てる。
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