本研究では、超塑性/非超塑性の組み合わせの複合材料において、超塑性変形中の粒界近傍における応力状態と粒界を構成する個々の結晶粒の組織学的因子(結晶粒径、形態、方位)の動的相関を明らかにすることを試みた。具体的に本研究では超塑性材料としてAZ80 Mg合金、非超塑性材料として純Alを用いている。 当初の計画では、超塑性変形の変形挙動を明らかにするために、有限要素法解析とCellular Automatonを用いた組織形成のシミュレーションを行う予定であったが、モデルの作成に難航している。そこで、本年度は温度とひずみ速度を多様に変化させて、引張試験を行うことで、超塑性変形のメカニズムを考察した。まずは変形メカニズムを考察するためのm値と変形の活性化エネルギーを求めた。温度は150~300℃、ひずみ速度は1×10-1~5×10-4 s-1と変化させた。また、純Al被覆の変形挙動に着目し、純Alのみの引張試験も同条件で行った。単独での変形挙動と複合化した際の様々な条件下での変形挙動を定量的に比較することで、超塑性材であるMg合金基材が非超塑性材であるAl被覆に及ぼす影響を明らかにすることを狙った。Mg合金/Alの複合材料のm値は200、250、300℃の時にそれぞれ0.24、0.30、0.33であった。一般的な超塑性材料のm値は0.3以上であるため、本複合材料は250℃以上で超塑性的な変形をしたといえる。また、活性化エネルギーはひずみ速度5×10-4 s-1の条件で200、250、300℃の時それぞれ125、100、90 kJ/molであった。本複合材料を主に構成するMg合金において、格子拡散の活性化エネルギーは約135kJ/mol、転位芯拡散は約92 kJ/molであるため、本複合材料は300℃で転位芯拡散、250℃以下では格子拡散による変形が生じていると考察された。
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