レーザー加工や微細構造の光学的な検査における精度向上には、レーザー光源の短波長化や出力の安定性が求められている。窒化物半導体を用いたLEDやレーザー光源に関する研究は活発であるが、深紫外領域(波長200nm以上)までに限られる。本研究では赤外領域のレーザー光を発する固体光源から真空紫外領域(波長200nm以下)まで任意の波長に波長変換できる疑似位相整合結晶の作製を目的として、双晶形成のメカニズムの解明に取り組んだ。具体的には、双晶粒界の形成メカニズムの解明、周期双晶の作製、周期双晶の波長変換特性評価の3項目に取り組んだ。 固液界面が平坦な場合、四ホウ酸リチウムが結晶成長すると双晶界面は{100}平面になる。一方、固液界面が荒れジグザグ形状になると双晶界面は結晶学的に安定な低指数面ではなく、ジグザグ形状の谷底の軌跡に沿って双晶界面が形成される。また、平坦な固液界面で成長する場合、シリコンの双晶界面は{111}になる。そして、双晶界面を挟んだ両側の結晶粒がファセット成長する場合は幾何学的に{111}双晶界面が形成できなくなり、両側のファセットの谷底の軌跡に沿って双晶界面が形成される。 光学素子として性能を向上するためには、不純物偏析の少ない周期双晶結晶を育成する必要がある。そこで、四ホウ酸リチウムが融液成長する際に不純物が偏析する様子をマイクロスコープを用いてその場観察した。固液界面付近の結晶は不純物の偏析がなく透明であるが、成長後に温度が低下した領域で気体が分離して固液界面へと移動して結晶中に取り込まれる事が分かった。一般的に高純度の結晶を得るには固液界面の融液側での不純物の拡散が重要であるが、その他に、結晶側での不純物の拡散も考慮して結晶育成する必要があることが分かった。
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