大型ダイヤモンド基板実用化に向けて、新しいダイヤモンド成長プロセスを提案した。そのキーとなるダイヤモンド下地構造としてIr/Si基板構造の作成に取り組んだ。従来のダイヤモンド成長用のIr/MgO下地基板構造ではダイヤモンドとMgO基板との1桁以上異なる熱膨張係数差によりダイヤモンド成長にクラックが発生していた。一方、本研究で提案する構造が完成すれば熱膨張係数差は殆ど発生せず、クラックフリーダイヤモンド成長のための下地構造としての利用効果が期待できる。 高品質なIr薄膜はSi基板へ直接的形成が困難なことから、MgO基板へのIr薄膜成長工程、Ir薄膜の超精密平坦化加工工程、Ir薄膜とSi基板の接合工程を核とする手法を提案した。新工程では、まずMgO基板上に成膜させたIr薄膜を、Si基板上に接合する。Irを転写移植のため母材となるMgO基板を超精密加工によって除去する。これをヘテロエピタキシャルダイヤモンドを成長に利用することで、将来的に大型のダイヤモンドを成長するプロセスが期待できる。 接合転写移植を実施するIr薄膜は極薄膜(1μm以下)であるため、本研究ではまず、接合転写を実現するための極微少量プラナリゼーションCMP加工技術の開発を進め磁気浮上機構搭載型研磨加工機を設計試作して極微少研磨加工を可能とした。さらにIrの結晶品質を改善するためにMgO基板の超精密加工による下処理を実施し原子平坦化したMgO基板上でIr薄膜の欠陥低減(40%低減)を得た。最終的にMgO上Ir極薄膜をSi基板に転写し、MgO基板を極薄Ir薄膜の界面までの超微少プラナリゼーションにより除去した。Ir薄膜表面も微少研磨されつつ完全に露出させ、目的とするIr薄膜/Si基板構造が得られた。
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