研究課題/領域番号 |
18K14031
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研究機関 | 宇部工業高等専門学校 |
研究代表者 |
茂野 交市 宇部工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (60707131)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 熱電材料 / 層状化合物 / 熱伝導率 / セラミックス / 酸化剤 / 焼結 |
研究実績の概要 |
熱電モジュールは温度差を起電力に変換できる熱電材料等によって構成され、材料特性次第では太陽電池を凌ぐ出力密度のポテンシャルを有する。我々は最近、セラミック系熱電材料では最高レベルの性能を持つCo層状酸化物であるNaxCoO2粉末を出発物質とし、ソフト化学プロセスである酸化還元 (Redox) 法による層間距離の制御を検討した。その結果、出発物質よりも層間距離が狭い新規Co層状化合物の合成に成功しつつある。新規化合物を用いた成形体の熱伝導率は出発物質の約40 %の低い値であり熱電材料として有望であることを見出した。ただし新規化合物は熱安定性に問題があり、緻密に焼結しようとすると層状構造が崩壊する。そこで本研究の目的を「狭い層間距離を有する新規Co層状化合物の合成とその緻密化手法の確立」とした。 今年度は、NaxCoO2 (x=0.80) 粉末 (以後NCOと略す) を出発物質とし、Redox法によりCo層状化合物の層間距離の時間変化 (変遷) を追うことに成功した。具体的には、酸化剤 (過硫酸アンモニウム) の添加・撹拌により、まずNCOよりも層間距離の広い1層水和物が生成し、その後、NCOよりも層間距離の狭い新規化合物となることがわかった。さらに、合成した層間距離の狭いCo層状化合物を低温で緻密化するための手法を模索した。その結果、水熱条件下での焼結プロセスを用いることにより、上記化合物の崩壊が始まる300 ℃未満で、相対密度約80 %相当以上の緻密な焼結体が得られることを見出した。また、熱電特性を測定するための装置の作成が完了したため、現在、熱電特性や微細構造との関係を明らかにする取り組みを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度に手がけていた他の研究に進捗が認められたため、そちらにリソースを割き、研究着手に半年の遅れが生じた。本質的な研究そのものは順調に進んでいるが、新型コロナウイルスの影響により所属部署外での実験が困難になっている。2020年度夏以降の研究加速が望まれる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究期間内に明らかにすることは「狭い層間距離を有する新規Co層状化合物の高性能熱電材料としての可能性検証」である。 (A) 合成したCo層状化合物の緻密体の作成方法の確立 「研究実績の概要」でも示したとおり、水熱条件下での焼結プロセスを用いることによって、常圧焼結では成し得なかった超低温 (300 ℃未満) での緻密化の可能性があることがわかってきた。そこで、さらに焼結助剤などの添加物を加えることで焼結性や熱電特性に及ぼす影響を明確化する。 (B) 緻密体の熱電特性の測定及びキャラクタリゼーション 作製した装置を用いて上記Co層状化合物の熱電特性を測定する。種々の分析手法を取り入れて熱電特性と微細構造との関係を明確化する取り組みを行う。また、上記水熱条件下での緻密化のメカニズムの一端を解明するための分析も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度、手がけている他の研究に進捗が認められたため、そちらにリソースを割き、研究着手に半年の遅れが生じた。また、予算の都合上、市販の熱電特性装置を購入することに無理が生じ、自作したが、一部の箇所で部品を追加する必要があるため、次年度に購入する。また、焼結実験及び一部のキャラクタリゼーションを所属機関外で行っているため、次年度もそれぞれ旅費、機器使用料として使用する。最後に、得られた成果を論文として発表するための費用にあてる予定である。
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