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2019 年度 実施状況報告書

bcc相のサブミクロングレイン化による超マグネシウム合金の実現

研究課題

研究課題/領域番号 18K14032
研究機関国立研究開発法人物質・材料研究機構

研究代表者

光延 由希子 (小川由希子)  国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 研究員 (70814268)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード結晶粒微細化 / 強加工
研究実績の概要

本研究では、Mg-Sc合金について、結晶粒径制御を用いることで、更なる高強度・高延性の達成と室温超弾性を実現し従来軽量合金を凌駕する超マグネシウム合金開発を目的としている。なお、2019年度は、8月より産前・産後休暇および育児休業により研究を中断したため、採用後から7月までの結果の概要を以下に記す。
当該期間では、結晶粒径制御および結晶粒径と機械的特性の関係に関する知見を得るため、まず、hcp相を有する、押出加工を施した試料について調査した。
押出加工法を選択したのは、昨年度4種類の強加工(冷間圧延, 高圧ねじり(HPT)加工, 溝ロール圧延, 押出加工)を試した結果、強加工後に混粒ではあるものの数 μm程度の微細な粒径を有することが確認され、最も安定して微細粒が得られると判断したためである。
Sc濃度の異なるMg-Sc合金について、押出加工を行い、その後様々な温度で熱処理をすることで再結晶温度および熱処理温度と結晶粒径の関係を評価した。その結果、いずれのSc濃度の試料においても10 μm以下の微細粒が得られた。また、熱処理温度と結晶粒径については明確な相関関係が確認できた。更に、Sc濃度が高いほど同一熱処理温度における再結晶後の結晶粒径は小さく、Sc添加が結晶粒径微細化に影響を及ぼすことが分かった。以上より得られた加工・熱処理条件をもとに、今後、様々な結晶粒径を有する試料の機械的特性を調査していく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究では、Mg-Sc合金について、結晶粒径制御を用いることで、更なる高強度・高延性の達成と室温超弾性の実現を目的としており、2019年度は、hcp相について、押出加工を施した場合の結晶粒径について詳しく調査した。その結果、少なくとも数μmの微細粒が得られた一方、bcc相における微細化は達成できていないため、「やや遅れている」と自己評価した。なお、2019年度は、8月より産前・産後休暇および育児休業により研究を中断したため、採用後から7月までにおける具体的な研究状況を以下に述べる。
まず、強加工として押出加工法を選択した理由は、昨年度実施した4種類の強加工(冷間圧延, 高圧ねじり(HPT)加工, 溝ロール圧延, 押出加工)において、押出加工を用いた場合、混粒ではあるものの数 μm程度の微細粒が確認され、最も安定して微細粒が得られると判断したためである。
hcp構造を有するMg-Sc合金について、350℃にて押出加工を行った。Sc濃度の異なる4合金について同様の加工を施し、得られた押出材に対し様々な温度で熱処理をすることで再結晶温度および熱処理温度と結晶粒径の関係を評価した。その結果、いずれのSc濃度の試料においても10 μm以下の粒径が得られた。今回の実験では光学顕微鏡を用いていたため、数μmオーダーが測定限界であったが、TEM等を用いることで測定不能であった試料についても粒径を確認できると考えられ、サブミクロンオーダーの微細粒が得られている可能性がある。従って、今後TEMによる観察も行っていく。また、加工後の熱処理温度と結晶粒径には明確な相関関係が確認できた。更に、Sc濃度が高いほど同一温度における再結晶後の粒径は小さったことから、Scが粒径微細化に影響を及ぼすことが分かった。現状、引張試験片を作製中であり、復帰後はこれを用いて様々な結晶粒径を有する試料の機械的特性を調査する。

今後の研究の推進方策

2019年度の研究成果から、hcpについては、押出加工が粒径微細化に有効であり、押出加工後の熱処理条件と得られる粒径との関係が明らかとなった。また、引張試験片を押出材から作製中である。よって、得られた熱処理条件と粒径との関係をもとに引張試験片に熱処理を施し、様々な結晶粒径を有する試料の機械的特性を評価する。一方、bcc相の押出加工は、温度の上限値や最大押出応力との兼ね合いにより、所属機関での実行が困難である。従って、bcc相の微細化については、別の加工法を試すとともに高温での押出加工が可能な業者を探索し委託するなどして解決を目指す。また、異なる結晶粒径を有する試料に対し、様々な温度下で負荷-除荷引張サイクル試験を行い、マルテンサイト変態が起こる温度域やその超弾性特性と結晶粒径の関係を調査する。加えて、加工条件によりその集合組織も変化すると考えられ、集合組織は変態ひずみといった超弾性特性に大きく影響する。よって、様々な集合組織を有する合金を作製し超弾性特性への影響も併せて調査する。具体的には、Mg-Sc合金におけるマルテンサイト変態時の変態歪の方位依存性はこれまでの研究により明らかになっており、011方向で高い値をとる。bcc単相に冷間圧延を施した後、その集合組織を確認したところ比較的011面が上を向いた配向を有していたことから、冷間圧延にて集合組織を制御した試料の引張サイクル試験を行い、その超弾性特性を調査する

次年度使用額が生じた理由

2019年8月より産休に入り、その後続けて育児休業取得のため、研究を中断中であるため、次年度使用額が生じた。
2019年度中に実施予定であった以下の内容を育児休業明けの2020年度内に行う。
押出加工を施した試料の結晶粒径を光学顕微鏡観察やSEM観察により調査する。以上より、的確な結晶粒径制御を行う指針を得る。このため、装置使用料を計上する。次に、様々な結晶粒径を有する試料を作製し、引張試験により、各々の強度・延性を評価する。これにより、Mg-Sc合金における結晶粒径と機械的特性の関係を導き出し、高強度かつ高延性を得るのに最適な結晶粒径およびその条件を明らかにする。このため、インゴット製作にかかる材料代および引張試験片への加工費を計上する。また、異なる結晶粒径を有するMg-Sc合金に対し、様々な温度下で引張試験を行い、マルテンサイト変態が起こる温度域やその超弾性特性と結晶粒径の関係を調査する。一方、各強加工法や加工条件によりその集合組織も変化すると考えられ、集合組織は変態ひずみといった超弾性特性に大きく影響する。よって、様々な集合組織を有する合金を作製し超弾性特性への影響も併せて調査する。
bcc-Mg合金における結晶粒微細化効果を調査した研究はこれまでにないため、学会等での成果報告は重要である。よって、得られた成果を2020年度春に開催される日本金属学会にて発表する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件)

  • [雑誌論文] Room temperature superelasticity in a lightweight shape memory Mg alloy2019

    • 著者名/発表者名
      Yamagishi K.、Ogawa Y.、Ando D.、Sutou Y.、Koike J.
    • 雑誌名

      Scripta Materialia

      巻: 168 ページ: 114~118

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.scriptamat.2019.04.023

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Ordering of the bcc Phase in a Mg-Sc Binary Alloy by Aging Treatment2019

    • 著者名/発表者名
      Ogawa Yukiko、Sutou Yuji、Ando Daisuke、Koike Junichi、Somekawa Hidetoshi
    • 雑誌名

      Metallurgical and Materials Transactions A

      巻: 50 ページ: 3044~3047

    • DOI

      https://doi.org/10.1007/s11661-019-05260-7

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Development of High Performance Magnesium Alloy Through Phase Transformation2019

    • 著者名/発表者名
      Ogawa Yukiko
    • 雑誌名

      Materia Japan

      巻: 58 ページ: 395~400

    • DOI

      https://doi.org/10.2320/materia.58.395

    • 査読あり

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公開日: 2021-01-27  

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