近年、非水溶液溶媒を用いたアルミニウム電析に関する研究開発が行われている。非水溶液溶媒を用いた電析技術は、その析出メカニズムなどの学術的関心のみならず、Ni電析技術の代替や精錬技術への適用など産業界からの関心も集めていた。一方で、イオン液体や有機溶媒などに代表される非水溶液溶媒は、水分の存在下では十分な性能を発揮できないため、雰囲気制御を必要とする。それゆ、ラボ研究においてはグローブBOXなどの密閉空間での作業となり、水溶液系に比べ煩雑なプロセスとなるため、その関心の高さに比べ、技術開発は遅れている。本研究では、今後の非水溶液溶媒の研究開発を加速させることを念頭に、非水溶液溶媒の簡便化、つまり雰囲気制御からの脱却を目指した。具体的には、Deep eutectic solvent(DES)を溶媒とした大気環境下で操業可能なアルミニウム電析技術の開発である。 本研究の着想にあたっては、DES溶媒の開発者であるAbbottらの報告を元に、アルミニウム供給源となる塩化アルミニウムの溶解を可能とするDES溶媒を探索した。結果、尿素と塩化コリンからなるDES浴が塩化アルミニウムを溶解させることを見出した。その後、塩化アルミニウム単体ではアルミニウムの析出を得るに至らなかったが、本浴に対して塩化ニッケルを添加することで、Ni-Al合金被膜を得るに至った。 Al共析量を増加させるために、種々の錯化剤の検討を行ったが、検討を行ったすべての錯化剤がNi量の析出をもたらすものであった。同時に、非水溶液溶媒の課題として、溶媒の粘度が高く十分に攪拌効果を得ることができていない点が明らかとなった。 本研究の中で、再現性を得られていないがDES溶媒にアルミニウム電析として実績のあるDMSO2を混合したところ、大気下において金属皮膜を得る機会があり、今後のキー技術の糸口を得て本研究の終了となった。
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